122話 「殺せんせー対理事長(2)」 ページ22
學峯の暗殺はギャンブル。
五つの問題集に五つの手榴弾を挟む。
見た目と匂いでは中身が分からないように施されていて、四つは対先生弾、一つは本物の手榴弾。
先に四回殺せんせーが問題を解き、最後に自身が解くという強者としての暗殺。
確率は20パーセント。
実際一発目はパニックになっている間に爆発し、現在溶けている。
回復する前に次に進めと學峯は解雇通知をチラつかせて見せる。
この人はどこまでも教育を施すためだけに生きているような人。
Aはそれを遠くから見つめていた。
どんな過去があったのかAは知らない。だが、教育のためだなんだと言って巻き込むのはやめて欲しい。
二発目を開ける前にAはボーッと教室を見ていた。
そんな時、爆風が来なかった。
殺せんせー「はい、開いて解いて閉じました」
學峯「……」
殺せんせー「この問題集シリーズほぼほぼどのページにどの問題があるのか覚えています。
数学だけ難関でした。生徒に長く貸してたので忘れていまして」
學峯「……私の持ってきた問題集なのにたまたま覚えていたとは」
流石にこの事には學峯も想定していなかったようで驚いていた。
Aはこの流れを見て笑う。
A「このタコにこの手のギャンブルは通じない」
業「そうなの？」
A「教師としてどこまでも熱心な初教師のこのタコに、問題集なんてもんが抜けてるわけない」
業「おぉ」
A「多分あのタコは、全部の問題集を覚えてるよ」
殺せんせー「まさか、日本中全ての問題集を覚えましたよ。
問題が解けるまで爆弾の前から動けない。こんなルール情熱がある教師ならクリアできます」
A「ほら」
Aと殺せんせーは同時に覚えていると発言した。
それを見て業は思う。
今この状況で最も賭けを得意とするのはAだと。
生か死、まさにDead or Aliveで生きている彼女が最も得意とするのがこの状況だろう。
殺せんせー「あなたなら私を分かってくれてると思いましたが、教え子の敗北で心を乱したようですね」
と言いながら次々問題を解いていき、最後は學峯の番になった。
殺せんせー「安易な暗殺であなたは自分自身の首を絞めた。
残り一冊、あなたの番です」
どうですか、目の前に自分の死があるという気分は。
學峯は若かった頃の自分の教え子たちの声が響くのを感じながら、最後の一冊を見つめていた。
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年12月3日 11時
