103話 「面談」 ページ3
Aは白紙のまま殺せんせーが待っている職員室に向かった。
A「失礼します」
殺せんせー「はい」
中には殺せんせーだけで、Aは緊張した様子で椅子に座った。
そして白紙の紙を差し出した。
殺せんせー「白紙、ですか」
A「……」
殺せんせー「君は随分迷っていますね。けれど、それくらいの方が先生は嬉しいですよ」
A「嬉しい……？」
殺せんせー「今まで全てに興味無かった五十山田さんが、自分の将来に真剣に悩んでいるその様子が、先生は嬉しい」
Aは黙り込んで白紙の紙を見つけた。
特に焦ったりはしないが、悩みはする。
A「正直な話さ、私あの時死ぬつもりだったから、将来なんて考えたことないんだよね」
殺せんせー「えぇ、それは知っています。
きっと、それほどまでに自分を追い詰めていたでしょうから」
A「けどさ、カルマに言われて気づいた。
私が死んだら、カルマが今度は置いてかれるって」
置いて逝かれる苦しみは誰よりもAが知っている。
A「だから、あの日からちゃんと自分の将来について考えてるんだけど、これって答えが全く出なくてさ」
殺せんせー「たくさん悩んでいる生徒は居ますよ。
けれどみんな、今はたくさん悩んでもいいんです。それが経験ですから。
それにまだ君たちには時間がある」
A「地球を爆破する、なんて言ってるあんたが時間を語るか」
Aは笑った。
その表情を見ると、殺せんせーはうんうんと頷く。
殺せんせー「すぐに結果を求める必要はありません。
五十山田さんのペースでゆっくり行きましょう」
A「はい。けど、取りたい資格はたくさんあるから勉強付き合ってください」
殺せんせー「なんの資格ですか？」
A「医者とか司法書士とか弁護士とか教員とか」
殺せんせー「結構追い込みますね！？現実的に無理がありますよ！？欲張りセットですか！？」
Aは立ち上がると、パニックになっている殺せんせーを置いて職員室を出た。
不思議と話す前より心は楽だ。
今日は、ゆっくりできそうだ。
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年12月3日 11時
