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K.K side
背中からAが抱きついてきた。
なんで、そう思ってると、
Aが泣きながら叫んでた。
『消えようとしちゃダメです！』
壱馬「A……」
北人「A」
『頑張ってきた自分を、殺そうとしちゃダメですよ。
私たちには想像を絶する辛さがあったかもしれない。
それでも、先輩だけは、あの頃の自分を否定しちゃダメです』
Aは多分、泣いてない。
きっと、堪えるのが得意な子やから
自分の気持ちに蓋をして俺を説得してくれようとしてる。
俺の事を愛そうとしてくれてる。
『先輩、先輩が言ってくれたんですよ。
ちゃんと頼れって、ひとりじゃないよって』
壱馬「……覚えとったんか」
『覚えてるに決まってるじゃないですか』
去年。
周りに雑用ばかり押し付けられて、
人の愚痴ばかりを聞き続けて、
色んな負の感情が溜まりに溜まってたA。
そんなAを見てられなくて、
その言葉を口にした。
誰にも頼れない自分みたいになって欲しくなかったから。
『きっと、その言葉は先輩が欲しかったものなんだって、
今ならそう思います』
壱馬「そんな……」
『大好きなお母さんに戻って欲しいって考えることの、
何がダメなんですか先輩。
そんなの、お母さんが大好きなら当然です』
壱馬「……」
『壱馬先輩は何も悪くない。
どんな理由であれど、こんな形でお母さんと離れて、
何も思わないお母さんっ子って居ないです。
世間的に見たら「こんな母親」って思うかもしれないけど、
先輩から見たら「たった一人の味方」だったんなら……。
先輩がお母さんを信じてたって、良いじゃないですか』
Aの言葉に俺は言葉が出なかった。
『大好きなお母さんを否定されて、
大好きなお母さんを思う気持ちを否定されて、
傷つかない人なんて居ないと思います』
壱馬「…………」
『先輩のその誰かを思い続ける気持ちは、
すごく素敵なものだと思います』
壱馬「っ」
北人「……A」
樹「…………」
『だから、自分までその気持ちを、
否定しないであげてくださいよ』
Aはそう言って、俺の体に回してる腕に力を加えた。
まるで、離さないって言ってるかのように。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年12月20日 11時
