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帰宅して少しすると、壱馬くんも楽になったのか、
体を起こして肩の力を抜き始めた。
少し動こうとすると、壱馬くんが手を握りしめてて動けず、
壱馬くんったら捨てられた子犬みたいに見つめてきた。
『隣に居とけばいいんですよね』
壱馬「離れんなっつーの、勿体ねぇ」
『独占欲の塊』
私が隣に腰を落とすと、壱馬くんが私の肩に凭れてきた。
意外と甘えたな姿に私が笑ってると。
壱馬「なぁA」
『ん?』
壱馬「何にもしてやれなくて、ごめんな」
壱馬くんの言いたいことは分かる。
だから私は何も言わないで、首を横に振るだけ。
『私はこんな風に幸せになれるって思ってなかった。
それだけで充分だよ、壱馬くん』
壱馬「そっか」
『あっ、でも』
私が壱馬くんを見つめると、壱馬くんも私を見てくれて、
体が向かい合ったその瞬間に抱きついた。
体幹がしっかりしてる先輩は抱きとめてくれて。
『こんな風に抱きしめ合うだけでも、充分幸せ。
だから、気にしないでいいんですよ』
壱馬「そっか」
『はい』
私たちが離れると、壱馬くんが私の手を離してくれなくて、
どうしたのか心配になると、壱馬くんは私に顔を寄せた。
『せんぱ、』
壱馬「しゃべんな」
『ちょ』
ふと気づいた。
壱馬くんとキスしてることに。
しばらくそうして過ごしてると、
ようやく離れた壱馬くんは幸せそうな顔をしてて。
壱馬「やっと、Aに初めてをあげられたな」
『っ』
壱馬「流石にキスまではしてんかったから。
ずっと考えてたんだ、俺には何が残ってんだろって」
『かずまくん……』
壱馬「幸せだな。
好きな人と、こうして繋がれるのって」
壱馬くんは目に涙を浮かべて幸せを実感してた。
その涙を見て私も釣られて泣きそうになったけど。
壱馬「A」
『ん?』
壱馬「愛してる」
優しいあなたは、ようやく誰かを愛することができる。
誰よりも愛情深くて、優しいあなたへ。
私はどれだけ愛情を注げるのか。
見つめ合った私たちは、引かれるようにもう一度キスをした。
-fin-
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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年12月20日 11時