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あっという間に時は過ぎて、卒業式。




ダンス部、バスケ部、空手部は、
主将引き継ぎやら何やらが大変だったらしい。



北人くんはエースであって主将じゃないのに。可哀想。



それでも認められてる三人のお見送りは盛大で、
三人が三人とも女性陣に囲まれていた。





他の二人は知りませんが、一応壱馬くんには彼女いるんですけど。










樹「あそこに行かなくていいの?」




『行けるわけないじゃん。
私みたいなか弱い女の子が行ったら潰されるって』










精神衛生上良くない場面に樹がやって来たから、
思わず苦笑いでそう告げた。




しまったと思った時には遅くて、
樹の綺麗なお顔はニヤニヤしていた。腹立つ。










樹「そうだねぇ〜。
助けてって言葉すら言えなかったもんね」




剛典「そういう樹もな」




樹「げっ」




『岩田先生。
お仕事は良かったんですか?』




剛典「今?仕事中だよ。
ほら」









やって来た岩田先生の手元には鍵があった。



なんの?と思ってると、顎で校舎を示してて。









樹「あ〜、近道の鍵閉め」




『確かにそれは大事なお仕事ですね』




剛典「でしょ?
こうでもしないとすぐ生徒が通っちゃうから、
それを閉めに来たの」




『お疲れ様でした』




剛典「また怒られるの嫌だからね」




樹「……ははっ」




『それは、まぁ……はい』




剛典「じゃ、俺はまた持ち場あるから。
じゃあね」










何しに来たのか分からない先生は、
まるで台風のように去っていった。




卒業式のテンションじゃない。










樹「何しに来たのあの人」




『……さぁ?』




樹「でも、助けられたのも事実なんだよな」




『そうね』










何かと私たちと繋がりがあったせいで巻き込まれてた樹。
そんな樹とセットで岩田先生も多少は関わりがあった。




けどあの人のおかげで、救われたところもある訳で。










樹「あれでもまだ二十代だよ?
俺らがあの歳になった時、ああなれてるかな」




『不安?』




樹「……少し」




『きっと樹なら大丈夫だよ』




樹「俺アングラだったんだよ」




『知ってる。
けど、樹は大丈夫。
痛みを知ってるから、きっと悪い方向には進まない』




樹「そっか」




『うん』










私と樹は顔を見合せて笑った。




私たちの卒業じゃないのに、少ししんみりした空気も心地よかった。

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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年12月20日 11時

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