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I.F SIDE





姉と三つ子の真ん中で生まれた俺に、
両親は興味を示すことは無かった。




多分、名前を呼ばれた回数自体そう多くなくて、
どこかに出かけることも今までしたこと無かった。



そんな俺の名前を呼んでくれたのは、
今も世話になってる祖父母のおかげだった。




誕生日プレゼントなんてものは無くて、
俺の存在を認めてくれるのは飼ってた猫のマイルとピアスだけだった。




姉妹と会話をしたことは無いし、
両親なんて目も合わせない。




ただ用意されるのはご飯だけ。




特別酷いことをされる訳じゃなかったから辛いとかは無かった。


そう思ってたけど、家族とすら会話したことない俺に、
他人と会話なんて難しかった。




だから他人と会話もできずにいたら、小学六年の時、
変なやつ、浦川翔平に出会った。










翔平「ふじわら、いつき……?」




樹「だ、れ?」




翔平「俺は浦川翔平!よろしく頼む!」










戸惑いながらも翔平と距離を詰めていくと、
やっぱり自分の環境がおかしいんだと気づいていった。



それから、「どうして俺は違うんだろう」って、思って、
食卓で夕飯を食べてる家族に問いかけた。










樹「何で俺の声は聴こえないの?」










誰も問いかけに答えてくれなかった。



最早自分の声が届いてるのかすら怪しい。




そんな時、引越しがきっかけで中学三年の時、
受験場所を勝手に変えられた。










翔平「樹、高校が分かったら連絡して。
俺もそっちに行くから」




樹「翔平」




翔平「俺は絶対に樹を独りにしない」










こっちが恥ずかしくなることをサラリと言った翔平は、
本当に後を追ってきてくれて、上京してきた。




この高校に来ても変わらないと思ってた。


ただ前と違ったのは、クラスメイトの会話に入れない俺に、
一人の生徒が声をかけてくれた。










『あんまり詰めすぎちゃうと驚いちゃうよ。
ごめんね、えっと……藤原くん』




樹「ん……」









それくらい短い会話だったけど、
Aが間に入る時間は不思議と何にも怖くなかった。




それから間もなくだった。










「なぁ樹」




樹「なに」




「ごめんな、お前をどっちも引き取ってやれなくて。
独りで勝手に生きてくれ」










両親が離婚。



独り立ちした姉は置いといて、
三つ子の姉を母が、妹を父が引き取った。





俺は独りになった。






そう、思ってた。










.

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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年12月20日 11時

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