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私たちは家の前に着くと、自然と繋いでいた手を離す。



少しだけ緊張する。




だけど、悪い結果にはならない気がする。










壱馬「行こっか」



『はい』









玄関のドアを開けると、既に北人くんは帰ってきてた。



そりゃそうだ、学校終わって何時間たってんだって話。



私たちは緊張しながらリビングに入ると、
北人くんがテレビをつけもしないで、ソファーに座ってた。










北人「おかえり」



『ただいま』



壱馬「ただいま……」



北人「……話はできたみたいだね」



壱馬「おん」










北人くんはきっと、誰よりも私たちを理解してる。



だからこそ、ちょっとした変化にもすぐ気づく。




私が気まずくて頷いてると、北人くんが立ち上がる気配がして、
顔を上げてみると、彼はキッチンに向かってた。










北人「取り敢えず、着替えてきたら?
荷物もずっと持ってるわけにいかないし」



壱馬「せやな」



北人「あったかいココアでも飲んで、
三人でゆっくり話そう」










北人「これからのことも」










私は取り敢えず着替えることにした。



きっと、それがいま私に出来ること。





すぐに着替えを済ませると、先輩は先に降りてて、
私はその反対側に腰を下ろした。










北人「はい、ココア。
ゆっくり飲も」



壱馬「いただきます」



『いただきます……』



北人「召し上がれ」










北人くんは頬杖をついて笑ってた。




本当いつ見ても可愛い顔してんなって思う。










壱馬「北人、」



北人「なぁに?」



壱馬「俺ら、付き合うことになった」



北人「……やっとかぁ」



『やっと?』



北人「……待ってごめん」










北人くんは一度謝ると、顔を俯かせて、
何度か目元を押さえてた。



きっと、込み上げるものがあるんだろうなって、
私たちはゆっくり北人くんが落ち着くのを待つ。










北人「壱馬はAの話を聞いて」



壱馬「おん」



北人「Aは壱馬の話を聞いたんだね」



『うん』



北人「それで二人は、互いを受け入れた」



壱馬「……そうや」



北人「やっと、誰かを愛せるんだね、二人は。
自分を縛り付けるものを外せたんだね」










その瞬間私は息を飲んだ。




北人くんは私たちどっちのことも知ってるから、
だからこそ、さっきの「やっとか」って言葉が生まれる。




ずっと北人くんは一人で全てを抱えてた。




その事に気づくのが遅かった。

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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年12月20日 11時

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