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慎「壱馬さん、俺は地獄でもついて行きますから。
絶対、独りじゃないですよ」
いつもは無口というか、塩対応な彼が
先輩にだけハッキリそう告げて、
樹と二人で支援室を離れていった。
そんな時入れ違いで田崎先生が来た。
敬浩「壱馬今日は午前中で帰る？」
壱馬「……はい」
敬浩「了解。
帰る前に陸に連絡してな、心配してるから」
壱馬「分かりました」
敬浩「それまでごゆっくり」
それだけ言って帰った田崎先生。
先輩は疲れたように椅子に座り込んでて、
どこか虚ろだった。
気を遣われるのが好きじゃないのは分かってる。
だけど、今までどういう距離感だったのか、
自分の中に疑問が生じてしまった。
北人「かーずま」
壱馬「ん？」
北人「勉強！やらないの？」
壱馬「一応やってはいるで。
課題とかも出してはいたから」
北人「え、やっぱりできた？」
壱馬「少なくとも北人よりはいいかな」
北人「腹立つこいつ！」
『ふっ』
翔吾「ははっ、静かにな北ちゃん」
北人「二人もかよ！」
こういう時率先して口を開くのは北人くん。
岩谷先輩は後押しで話し出すことが多い。
おかげで私と先輩も気が楽になった。
北人「頭良いアピールやめてよね！」
翔吾「ホントな」
壱馬「言うて成績50位以内の二人が何言うてんの」
北人「うるせえ10位以内の人間め！」
翔吾「北ちゃん知能指数下がった言い方してんな」
『樹居たらバカにされてますよ』
北人「おいお前らさ！」
騒ぐ北人くんを見てると、先輩と目が合った。
その先輩は優しく微笑んで肩の力を抜くと
北人くんから教室の外に目を向け出す。
壱馬「病室で、ずっと考えてたんだ。
母さんのこと」
北人「……」
翔吾「……」
壱馬「ようやく、自分の中でも整理がつきそうでさ。
いつか絶対話すから、それまで待っててくれん？」
不安そうな背中はとても華奢で。
どんなに頼もしくてもまだ17歳。
まだ高校三年生でしかない。
北人「当たり前じゃん」
翔吾「焦らんでもええから」
『そうですよ』
私たち三人の答えを聞いた先輩は、
ゆっくりと息を吐き出して、振り返った。
壱馬「ありがとう」
その表情は、どこかぎこちないけれど、でも、
今までの表情とはどこか違ってた。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年12月20日 11時
