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K.K side
広臣「14分55秒。
ギリギリだな、壱馬」
臣さんがコーヒーを飲みながら俺を見て笑った。
どうしても会いたかった。
それがまさか今日だなんて思ってなかったけど。
広臣「間に合ったから許してやる。
座れよ、ここに」
壱馬「失礼します…」
広臣「そう緊張すんなって」
この人と会う時はいつも緊張する。
あの日から、ずっと。
広臣「で、用ってなんだよ」
壱馬「俺、あなたに許されないことをしてきたと思います。
助けてくれたのに、母を第一に考えてたから、
恩人であるはずの臣さんに辛く当たってた」
広臣「そう言うもんだろ。
たった一人の母親を、ガキの壱馬がたった一人で、
何を犠牲にしてでも守ろうとしてたんだから」
壱馬「今回の件で、みんなに言われました。
「壱馬は独りじゃない、地獄だろうがみんな一緒だ」って」
広臣「ほーん」
臣さんはただ優しく笑って頷いてくれるだけ。
この人は前からそうだ。
そういう人だ。
だからこそ、あの時の自分はこの人に話したんだと思う。
壱馬「俺は、愛されてなかったとは思いません。
アルバムを見返して、そう実感しました。
特に、北人なんかが居るとより一層感じました」
広臣「大変だったらしいな、北人」
壱馬「……親に追い込まれて絶縁してまで離れた北人。
あいつは自分の心に答えを見つけられて凄いと思います。
だからこそ、今度は自分の番だと思いました」
広臣「お前の答えはどうなんだ?」
壱馬「自分の何もかもを犠牲にしてでも守りたい、救いたい。
そう感じて育ってたからこそ、今度こそ真っ当に誰かを守りたい。
そう思いました」
テーブルのメニュー表から顔を上げて臣さんを見ると、
優しい眼差しで見ててくれて、その顔は笑ってた。
俺には兄弟は居ないけど、
兄貴が居たらこんななのかなって思える表情だった。
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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年12月20日 11時