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K.K side








十八手前にもなって泣き続けてしまって
今の俺は穴があったら入りたいくらいに恥ずかしい。




それでも北人は隣に座ってくれて、
Aに至ってはなぜかずっと手を握ってくれてる。










慎「壱馬さん」



壱馬「ん?」



慎「お母さんと、話せたんですか?」



壱馬「……直接じゃないけどな」










みんなしてどういうこと?




ってハテナが浮かんでるのが見える。



素直な反応に俺は笑うと、
みんなと合流した時のように空を見上げた。










壱馬「最後に両親揃って誕生日祝いをしたのは四歳の頃。
まだ父親も家を出る前で、母さんも優しかった頃。
で、その次の春には父親は居なくなってて、
正直離婚してんのかしてないのかは分からないとこではある」



『そんな幼い頃……』



壱馬「その翌年にはもう母さんはおかしくなってて、
冬生まれの俺は祝われることは無かったけど、
あの人はあの人なりに、必死だったんだなって今なら分かる」










小さかった頃の俺を思い出す。




ただただ人見知りが激しくて、
母さんの背中から離れることができなかった。




けど、たった一度の自分の誕生日。
クリスマス、正月と来て、豪華なパーティーはできなかった。










壱馬「別に盛大に祝ってもらうとかじゃなかった。
けど、それでも俺は嬉しかったんだ。
歳の数だけ火がついたロウソクが刺さったケーキを
家族だけで囲んで、誕生日を祝って、
二人から「壱馬、誕生日おめでとう」って抱きしめてもらえる。

話すの苦手だったけど、でも、それだけで幸せだった」










壱馬「プレゼントなんて要らない。
ただ、それだけで良かったんよ、俺は」










誰かの鼻を啜る音が聞こえる。




それに釣られて、
また込み上げてきそうな涙を堪えるために俺は空を見上げる。










壱馬「もう少ししたら、年が明けるやろ。
そしたら俺の誕生日が近づく」










壱馬「傍聴席でな、一度だけ顔が合った。
裁判の終わりに、一言だけ良いですかって」



翔吾「まさか……」



壱馬「最後になるだろうからって。母親としての姿は」










誰かの息を飲む音が聞こえた。




本当、優しい人たちに出逢えたと思う。





きっと、俺の人生は幸せか聞かれたら迷うかもしれない。



それでも、この人たちに出逢えた幸せは
誰にも否定させない。










壱馬「最後に、誕生日おめでとう。
って言われた」

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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年12月20日 11時

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