62 ページ12
あの後、翔平と慎も来て和気あいあいとしてた。
けど、全員帰ったその日の夜。
北人「疲れた?」
壱馬「……まぁ」
北人「お疲れ」
先輩は気疲れしてソファーに脱力してた。
それを労る北人くん。
壱馬「前までなら、取り繕えたのにな」
北人「でも、みんな喜んでるんだよ」
壱馬「……喜んでる?」
『先輩は一人で抱えて、一人でどうにかしようとしてしまう。
そんな人ですけど、見てる側は案外、寂しいもんですよ。
頼られてないのかなぁって』
北人「そうそう。
樹なんて、嫌いなものは人の皿に乗せてくるし、
苦手なタイプの人間が来たら俺や翔平を盾にするし」
『先輩は、あの子たちに頼られて迷惑って思うんですか?』
壱馬「可愛いなぁってはなるけど、迷惑じゃ……」
『それと同じですよ。
ね、北人くん』
北人「そうそう。
だから、頼っていいんだよ壱馬。
どっちかって言うと、
前みたいに一人で抱えてる方が心配だから」
某光るネズミのぬいぐるみを抱きしめる先輩は
私たちの言葉を飲み込もうと必死になってて。
そんな姿の先輩に北人くんは笑ってた。
北人「そんなに難しく考えないでよ!」
『それに、先輩が「周りも頼れ」言ってるんですから、
その姿を見せてくださいよ!』
先輩は自分みたいになって欲しくなかったから
かけた言葉だったのかもしれない。
もしかしたら、認めて欲しかったのかもしれない。
色んな感情を抱えてたかもしれないけど、
その言葉が、その行動がどれだけ嬉しかったか知ってるだろうか。
北人「壱馬はさ、意識してないかもだけど。
Aが素直に感情出せたのは壱馬だけだから」
壱馬「……」
北人「自分に何ができるんだろうって考えるかもしれない。
でも、壱馬は自分が辛い時でも誰かを救えてた」
北人「それが、まこっちゃんとAだと、
俺は思ってるよ」
北人「だからね、壱馬。
辛い時は辛いって、言葉にしてもいいんだからね。
そしたら絶対、俺らが助けるから」
そう断言した北人くんは、誰よりも頼もしく見えた。
そう感じたのは私だけじゃないだろう。
402人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪乃 | 作成日時:2023年12月20日 11時