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K.K side








二人っきりになった教室で、
北人は考える姿勢のまま動かなくなった。










北人「何から話そうかなって思ったんだけど、
少し前に、Aを養子にしようとしたんだ」



壱馬「おん」



北人「ただ、そうしてしまうと、
Aの自由が無くなるのは分かってた。

ほら、壱馬も知ってるでしょ?
俺の親の束縛の酷さ」










毎週勉強の話、テストの話。



次はいつ帰ってくるのか。



彼女の話から、北人の交友関係。





それら全ての話をしてたのを俺らは隣で見てた。










北人「昔から、息子たちが自分の想定外の動きをすると、
ヒステリックを起こして暴れ回るような親。
ただでさえ厳つい女性が苦手なAには難しいのにさ、
最初は甘くして、後から鞭を打つのも分かってた。

あの人は、娘を欲しがってたから」



壱馬「おい、それって……」



北人「そう。
Aが来ても来なくても俺は見放されてた。
年の離れた兄貴は問題無く逃れられたけど」










そう言う北人はいつも笑ってる。




まるで全ての感情を押し殺すように。




それを続けてたら、どうなるかくらい北人だって分かるはずなのに。










北人「壱馬、俺壱馬の考えてることわかるよ。
感情を押し殺すことに慣れたらどうなるかくらい分かるだろ」



壱馬「なら」



北人「俺は、壱馬と違って親に愛されたことなんて無かった」



壱馬「っ」



北人「どんな理由でも愛情を知らないから、
親に依存することなく、ここまで来れたし、
俺には、Aが居てくれるから生きようって思った」



壱馬「A?」










俺が首を傾げると、北人は寂しそうな笑顔を浮かべる。




普段と違うその雰囲気に慣れない。










北人「まだ五歳の頃、初めてAに会った。
その時に母さんが俺を打ったことがあるんだけど、
そんな俺を抱きしめたAが言ったんだ。

大好きなほっくん殴らないでって。

それで、どれだけ俺が救われたと思う?」



壱馬「……」



北人「そんな子を自分の欲のままに振り回そうとする親なら
俺はこっちから捨ててやるよ。

それで大好きなAを守れるのなら」










俺と北人の鋭い視線が交差する。



そんな時、北人の雰囲気が優しくなった。










北人「壱馬、周りを見てみてよ。
案外周りには、無条件で愛してくれる人がいるよ」










北人にそう言われて俺はハッとした。

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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年12月20日 11時

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