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日に日に私たちは疲れが溜まってた。
溜まらない方が難しいのも事実で。
敬浩「最近部活がヤバいって聞いたぞ御三方」
北人「……」
翔吾「……」
『……』
敬浩「壱馬は後一ヶ月で復帰できなかったら、
そのまま部活引退になっちまうしな」
北人「壱馬は、解雇なんですか?」
敬浩「いや、ここの部で圧倒的な実力持ってんのは壱馬だ。
副将に預けようともしたけど断られた。
代わりに大会には出なくていいからって。
壱馬以外、ろくに戦績収められないって本人たちが言ってた」
誰もが先輩に頼りっきりだった。
そう実感して、私は体の震えが止まらなくなった時、
北人くんが話し出した。
北人「俺、学校を辞めようか迷ってます」
敬浩「北人……」
北人「Aの養父が学費も衣食住も出してくれるらしいけど、
大人を信用出来ない俺には、ちょっと厳しいかなって思って」
敬浩「その後はどうするか決めてるの?」
北人「先生は納得できないと思うけど、世の中道は沢山ある。
だから、意外と路頭に迷うことは無いんです。
皮肉にも、Aのお母さんがきっかけだったんですけど」
敬浩「お前、何考えてんだよ」
『北人くん?』
北人「ねぇ先生?」
敬浩「何?」
北人「俺らって、子供ですよね」
北人くんの様子がおかしくなった。
雰囲気も何もかもが変わって見えた。
敬浩「そう、だよ?」
北人「そんな子供にあれこれ背負わせる大人を信じる方が
今の俺らにとっては死ぬことよりも難しい」
翔吾「北ちゃん?」
敬浩「それが、北人の答えなの?」
北人「なーんて、冗談ですよ。
Aのこともありますし、今だけ耐えて、
将来全額返済して縁を切るつもりでいます」
敬浩「お前、役者だな。
完全に雰囲気に騙されたぞ」
北人「敵を騙すにはまずは味方から、ですよ」
その言葉を聞いて誰もが安堵した。
北人くんはずっと笑ってる。
今も昔も。
どんな状況でも笑ってるのを、
この時の余裕のない私は気に止めることを知らなかった。
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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年11月26日 6時