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長い眠りに就いたようだった。
目を覚ますと横には先輩が居て。
壱馬「A、分かる?」
『せ、んぱい?』
壱馬「おん、そうやで。
良かったわ、無事目覚めて」
少しすると看護師さんと先生が来て、
状態を見てもらいつつ、早ければ一週間で退院できるって言われた。
本当に臓器に損傷少なかったのが奇跡的に良かったって。
先輩が北人くんに連絡を入れてくれてて
ようやく二人になる時間が出来た。
壱馬「そう言えばな、俺腎臓のドナー見つかったんよ」
『え、そうなんですか?』
壱馬「匿名やったんやけど。
まぁ、大体の宛はついてる」
そういう先輩は寂しそうな、切ない雰囲気で。
思わず私は先輩の手を握ってた。
『先輩の話は、お互い健康になってから、聞きます』
壱馬「……俺な、ずっとAが俺に興味無いんやと思ってた」
『っ』
壱馬「けど、話してたら違うってのも分かった」
『そうですか』
少しの沈黙。
私たちは互いの手を握りながら、
ただ流れる雲を見つめていた。
壱馬「なぁA」
『はい?』
壱馬「何も聞かないでくれて、
ほんまにありがとうな」
『……っ』
先輩のその言葉に、私は胸が苦しくなった。
私も先輩も、大人の勝手な都合に振り回されただけ。
それだけなのに、
どうして先輩が悲しい顔をしてるのか。
そう思ったら私は、胸が苦しくなった。
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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年11月26日 6時