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三人でずっと先輩を見てると、
病室のドアが開いた。
個室だから、先輩目的以外無いわけで。
誰だろうって思ってると、私は知らない人だけど、
二人は違うらしくて、速攻で顔を落とした。
「遅くなってごめんね。
たかちま先生から今日揃ってるよって聞いたから」
「見てた側も辛かったよね」
「ごめんね、傍に居てあげられなくて」
「もう大丈夫だよ」
私は何も知らないけれど
この人と、二人は違うらしくって。
私が席を立とうとすると、その人は手で止めた。
「ごめんごめん、座ってていいよ。
自己紹介がまだだったね、僕は青山陸。
三人の先輩です」
青山陸さん。
私の三つ上で、三人が一年生の時に風紀委員長。
今でこそ大人しいけど
何かと問題児だった三人の世話を焼いてたらしい。
特に、先輩と北人くん。
陸「本当はもっと早く来れたら良かったんだけど、
時間かかっちゃったね」
北人「陸さんが来てくれて、壱馬も嬉しいと思います」
翔吾「もちろん、俺らも」
二人の声は震えてた。
けど、辛いとかそういう感情じゃなくて
ホッとして力が抜けたような。
陸「また、あのお母さんが壱馬を苦しめたって?」
北人「逮捕されることになったそうです。
全てを自供して」
翔吾「今までは証拠が無かったから警察も取り合わなかったけど、
今回はさすがに動いてくれたらしくって」
北人「ただ、毒を飲ませた人自身はまだ捕まってなくて。
あの人も所在は知らないって言ってたから」
翔吾「名前とかは全部、壱馬が言ってくれてたから、
後俺もその人の顔は知ってるから、似顔絵頼んで捜索願出してます」
陸「そうなんだね」
やっぱりここに居ちゃいけない。
立ち上がろうとすると、
北人くんが肩を抑えて、逆に二人が立った。
北人「ごめん、俺らが動くからさ、
Aは壱馬の傍に居てあげて」
『え、でも』
翔吾「俺らが居るよりも、安心できると思うから。
壱馬が目を覚ましたら、俺らから話せることは話すからさ、
今は何も聞かないで、傍に居てやって」
『…………分かりました』
三人にお願いね、と言われて
二人っきりになった病室。
ふと、布団に出てる先輩の手を握ると、
まだ生きてる人の温もりそのもので。
何でか知らないけど、涙が溢れた。
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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年11月26日 6時