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その日から三日、
学校が休みの日に私たちは揃って
病院にやって来た。
あれから、一度も先輩は目を覚ましてないらしい。
北人「目を覚まさないのは、その世界を望んでるから」
翔吾「ん?」
北人「起きたくないんだって。
現実の世界が残酷なことを知ってるから。
だから、目を覚まさなくなるんだって」
エレベーターを待ってる時に言われた言葉。
北人くんは北人くんなりに調べたんだと思う。
翔吾「たくさん苦労してきた壱馬がさ、
せめてその世界でだけでは、楽しく過ごせてるとええな」
北人「うん」
『そうですね……』
先輩は、たくさん辛い思いをしてきた。
人の闇を何度覗いたのか
私たちには分からないことだらけだけど。
それでも、今見ている世界が
何も無い幸せな世界だと嬉しく思う。
北人「たかちま先生は、ああ言ってたけど。
きっと、壱馬の地雷踏んだのかもね」
翔吾「壱馬の地雷なぁ。
あっちこっちに張り巡らされてっからなぁ」
『わりとあの方、刺激するの得意ですからね』
北人「本当性格悪いわ。
それで苦しんでるやつもいるのに」
私たちは到着したエレベーターに乗り込んで
目的の階へと向かう。
何気に初めて面会する私。
翔吾「そういえばドナー見つかったんかな?」
北人「まだって言ってたよ。
親戚とか絶ってるからから」
翔吾「だよなあ」
到着するエレベーター。
少し歩いて、廊下を曲がって、その突き当り。
そこが、先輩の病室。
北人「壱馬、入るよ」
翔吾「失礼しま〜す」
『し、失礼します』
最後に会ったあの日以来の先輩。
あなたは、どんな世界に居ますか?
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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年11月26日 6時