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樹から先輩のことを聞いた。




けど、私は行く気になれなくて茶道部の教室に入った。



ここなら少しだけでも気持ちが落ち着くと思ったから。





でもそんな上手い話はなくて落ち着かない。


凄く胸が痛い。










敬浩「やっぱりここに居た」



『あ……先生……』



敬浩「直人くんが探してたよ?」



『……』



敬浩「壱馬、心配だね」










田崎先生は、私の居る場所から少し離れたところに座った。



先生は無理に教室に戻すとかはしなくて。










敬浩「そう言えば今日珍しく樹来てたね。
岩ちゃんが喜んでた」



『樹が、助けてくれました』



敬浩「ん?」



『クラスの子に、先輩のことで何か知ってる?って聞かれて。
でも私、あまりにも先輩自身のことを知らなさすぎて
考え込んで、なんにも答えられなかったんです。

早く答えなきゃなのに、口は開いてくれなくて……。

そしたら、樹が、何傷口抉ってんだよって、
関わってない奴らより関わってる人の方が辛いだろって
怒ってくれたんです。

本当は人と関わるのも、話すのも嫌いなのに
盾になってくれたんです』



敬浩「そっか」



『先輩も、クラスメイトや部活の子に頼まれたら
断れない私の代わりに断ってくれたり、ずっと守られてきてた』










一度話し出したら口は止まってくれなくて。




田崎先生はただ相槌を打つだけで。










『私、先輩に助けられてばっかだったけど
じゃあ私は先輩に何ができてたんだろうって考えたら……。

一度考えたら、先輩に関わらない方がいいんじゃないかって……』



敬浩「壱馬は、嬉しかったと思うよ」



『え……』



敬浩「Aは、距離感を掴むのが凄く上手いからさ、
逆に壱馬のことを探らなかったでしょ?

本当は、壱馬のこと気づいてたのに」



『っ』










田崎先生の言葉に私は何も言えなくなった。




それが事実だったから。






別に全てを知ってたわけじゃない。





ただ、家庭環境が良くないことや
私と、北人くんや岩谷先輩、部活の人たち、他人に向ける
「川村壱馬」が全て別人だってことを知ってた。





それでも、探っちゃダメな一線を人は誰しも持ってる。










敬浩「知ってたのに、敢えてそのままで居た。
そのままで居て、探ろうとしなかった。
それがどれだけ壱馬にとって安心できる環境なのか」










田崎先生の声のトーンはとても優しくて
少しだけ私の心に余裕が出来た。

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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年11月26日 6時

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