優しいあなたへ【川村壱馬】 (ページ12)

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先輩は部活に向かって、
北人くんと私はリビングで各々過ごしてた。

親と会った時はいつもこうなる。

何かをすることもできなくなって、
特に、北人くんが住むようになってからは
それが顕著になったと思う。

彼がここに来る前は、ずっと耐えれたのに
今は耐えることすら難しくなった。

人って、不思議なものだ。

温かいモノに触れると離れ難くなるのと同じで、
私の心はどこか、彼に依存してるのかもしれない。

彼だけじゃない。

隠してる私自身を誰よりも早く見つけた
先輩にも。

私は誰かに依存して生きていくしかない。

あの人と、何も変わらない生き物だ。

北人「A、どうした？」

『ん？』

北人「ずっとボーッとしてるから。

また考え事？」

『……うん。
けど、大丈夫だよ。

あの日のことは何も考えてない』

北人「ならいいや」

北人くんはいつもの優しい笑顔で笑って
私の頭を撫でるときっちんに立った。

間もなくお昼になる。

北人「壱馬、今日もここに帰ってくるって」

『そう。
お家は良いんですか……？』

北人「うん。
壱馬も壱馬で思春期だからねぇ」

北人くんは笑ってた。

と思う。

私の前では、いつも、笑う人だから。

まるで、その感情しか知らないように。

北人くんや先輩は私のことを知ってるかもしれない。

でも私は、

二人のことを、何も知らない。