優しいあなたへ【川村壱馬】 (ページ1)

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夕方、部活終わりに校舎を抜けると
乗降口にはあなたが立ってた。

壱馬「だいぶ遅い時間まで残ってたんや」

『先輩こそ。
今日は空手部の日じゃないですよね』

壱馬「まぁな。
けど、誰かさんが心配で残っとった」

止まらない私の隣に、
当たり前のように並ぶあなたは、

空手部の主将兼エース。

容姿端麗の文武両道を地で行くパーフェクトボーイ。

川村壱馬。

壱馬「今日はスーパー寄らないん？」

『ストーカー並に把握してますよね、本当。
結構です、昨日は同居人が食べなかったので』

壱馬「あー、噂の同居人な」

『噂ってほどでも無いですけど。
ってかなんですかその噂って』

壱馬「自分の胸に手を当ててよう考えてみ？」

『……吉野さんですか？
ただの従兄弟ですよ』

壱馬「茶道部エースと、バスケ部エースなぁ。
家系的にオモロイな」

私の同居人は、従兄弟の吉野北人。

全国常連校のこの高校にスカウトされて
宮崎から上京してきた。

それで、この人の相棒で親友である。

この人と繋がるきっかけだったのも吉野北人だ。

壱馬「あ、北人」

北人「あ、壱馬とAじゃん。
相変わらず二人一緒なんだね」

壱馬「誰かさんがストバスやる言うてたからな。
しっかりお家に送り届けようかと」

北人「どうせAのご飯食べたいだけでしょ」

「北人ー！早く戻って来いよ〜」

北人「すぐ戻る〜！」

壱馬「まぁ、しっかり家まで送り届けるわ」

北人「よろしく！
ご飯もよろしくねー！」

当たり前のように交わされる二人の会話に
私はため息が出た。

一人の平穏は一体どこへ………。