【暗殺教室】面白い生徒 (ページ41)

今日:27 hit、昨日:29 hit、合計:98,665 hit

41話ページ41

夕方を過ぎた頃、生徒たちが続々と起きてきた。

Aが砂浜に座っていると、茅野が泣きながらAに抱きついた。

「良かった若月さん、目覚まして良かった……！」

Aは抱き返すことも無かったが、ただただされるままに過ごしていると、横からカルマがAの額にデコピンして来た。

「流石に焦ったよ若月さん」

(……焦った、か)

Aはカルマを一瞥すると、立ち上がってホテルの方に戻った。

その背中を見届けた生徒たち。

「なんか、前の頃に雰囲気戻ったね」

「うん」

何がきっかけで距離が空いたのか分からない生徒たち。

少しは心を許してくれたと思っていたが、少し距離が開いた。

(浅野くんなら何か知ってるかな)

カルマは沈み出した夕陽を見つめる。

──────────

Aが窓から海を見ていると、殺せんせーが現れた。

「おはようございます若月さん」

(……まぁあれくらいで死ぬわけないか)

「体調はどうですか？」

昨晩、Aは自ら毒を注入した。

それがどういう事か。

「先生、実は怒ってます。
どうしてあの時、死を分かっていて選んだのか」

Aは殺せんせーから目を逸らした。

その態度を咎めるのではなく、殺せんせーは共に海を見つめた。

「先生は、まだあなたとお話が出来てませんので」

(他人のあんたに、何が分かんのよ。
幼い頃から家族に否定される恐怖)

Aの脳裏には、たった一人認めてくれていた兄が向けたあの視線。

とても冷たかった。

小学生らしくない目。

父譲りの、冷たい目。

「誰かに否定されることはとても怖い。
ですがね、今のあなたも、彼からの優しさを否定している。
カルマくん、ずっとあなたの心配をしてましたよ」

Aはその瞬間、目を見開いた。

「あなたが気を失う前から、あなたと話すようになる前から。
あなたに出会ってから、ずっと」

殺せんせーの言葉に、Aは唇を噛み締めた。

(心配されたって、したって。
あの人の呪縛からは逃れられない)