【暗殺教室】面白い生徒 (ページ38)

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38話ページ38

大掛かりの暗殺は失敗に終わった。

ましてや、完全防御形態という、動けない代わりに核爆弾でも傷一つつかないなど、チートを発動された。

そんなこんなでホテルのロビーに移動した生徒たち。

Aは椅子の上で体育座りしながら、昼間に殺せんせーと話していたことを考えた。

(衰えた筋肉は訓練すれば治る。
けど、治ったとして、家族はそれを受け入れてくれるとも思わない。
また誰かに、あの人に否定されるくらいなら、最初から話さない方が……)

膝を抱える手に力を入れたA。

ぼーっとしてるように見せかけて、考え込んでいるA。

「若月さんは相変わらずぼーっとしてるね」

「それが若月さんって感じもするけどね」

渚と茅野は苦笑い。

カルマはストローを咥えてまた別のことを考えていた。

誰もAの心境を知らない。

(きっと、あの人たちは私が死んでも何も言わないんだろうな。
いや、悲しみすら思い浮かばないか)

Aは立ち上がると、スタスタとどこかに歩いていった。

「どこ行くの〜？」

カルマが声かけると、Aはロビーの御手洗のマークを指差した。

それを見たカルマはふーんと彼女の背中を見届ける。

Aはフードを深く被り御手洗へ入る。

(ねぇ父さん、あんたの教育で私が死んだら、その責任はどっちが取るんだろうねぇ)

個室に入ると、便座に座ることなくドアに凭れかかった。

ただ愛して欲しかった。

そう願うことは悪いことなのだろうか。

たとえ話すなと、何度も何度も厳しく言われても、たった一度抱きしめてくれればそれで良かった。

だから、Aの願いは叶ったのだ。

カルマに抱きしめられたあの時、Aの中で未練が無くなった。

律の時を見る限り、殺せんせーは確かにAの気持ちを優先させてくれるだろう。

しかし、それができないのにも訳がある。

相手は怪物だ。人間じゃない。モンスターなのだ。

「……死にたい」

誰もいないトイレの個室で、Aは掠れた声で呟いた。