【暗殺教室】面白い生徒 (ページ22)

今日:3 hit、昨日:29 hit、合計:98,641 hit

22話ページ22

その日一日、授業を妨害されては生徒が片付けを繰り返していた。

お昼時間、Aが寝ている時、トントンと机を叩かれた。

「……？」

Aが顔を上げて、辺りを見るとそこにはカルマが立っていて。

その手にはイチゴ煮オレパックがある。

「これ、ありがとね」

「……」

「前のお礼って書いてた。
若月さん、律儀なんだね」

カルマが微笑むとAは体を起こしてスマホを取り出した。

【帰る時の駅のホームで色々くれたから。
それが嬉しかったから】

「そっか。余計じゃなかったなら良かった」

「っ……」

【余計じゃないです。
本当に、ありがとうございました】

その瞬間、カルマは気づいた。

今、ほんの一瞬だがAが声を出そうとしたことを。

「っ……」

Aは喉を押さえてカルマを見て苦しそうに笑う。

決してそんな表情が見たいんじゃない。

「喋んなくていいからさ、俺と一緒に過ごそうよ。
たまに渚くんや茅野ちゃん、他のみんなと過ごせば、楽しい一年になると思うよ」

教室には各々持ち寄せたお菓子をシェアするグループ。

暗殺を考えるグループ。

校庭からは暗殺ゲームを繰り広げる生徒たちの笑い声が聞こえてくる。

「俺、若月さんとは仲良くなりたいな〜」

「……」

「よろしくね、若月さん。
これもありがと」

カルマはもう一度笑うと、Aの頭を撫でる。

その手は優しくて。

(なんでこんなにも、同じ人でも違うのかな。
母さん、父さん、………兄さん)

Aは顔を落として、浮かんでくる涙を見られないようにした。

(「誰が喋っていいと言ったかしら！
あの子の勉強の邪魔になるのよ！」)

(「母さん、そんなに言わなくたって」)

最初は兄だって味方だった。

けど、小学三年で、初めて大喧嘩をした時、兄は言った。

(「二度とその声を聞かせるな！」)

幼かったAは、最後にごめんなさいと謝り、部屋にこもった。

それからは早かった。

元よりたった一人の兄以外に自分の存在を認められなかった。

一言でも話せば睨まれ、それを兄が庇ってくれた。

だが、その兄すら話すなと言うのなら、

「話さなければいいだけだ」

Aはその言葉を最後に、その時の涙を最後に話すことをやめた。

声を出すことをやめた。

だから、誰とも関わらないようにぼーっと一日を過ごすようになった。

──────────

翌日、Aが登校すると、自律思考固定砲台は寺坂によってガムテープに巻かれていた。