07 ページ7
その日は二人とも仕事を休んだ。
流石に二人で置いてはおけないし、話すことが山ほどあった。
広臣「仕事、どうする？」
『お互い、仕事してる理由同じだよね』
広臣「進学すると同時に家出る気なのかお前も」
『けど、あの子達が居たらさ家出れないでしょ。
進学だって簡単じゃないし、何ならこれからの仕事だって難しい。
それにさ、小学生にもなってない子供たちに、コンビニ弁当ってのも酷い話よ』
パック飲料を片手に話すAの言葉は最もだった。
今日はお祝いということで外食で済ませたが、いつもと言う訳にはいかない。
バイトの事などを知らない親が連れてきた案件に、二人は頭を抱える。
だが、同時に脳裏には、幼い頃の家の光景が過ぎる。
広臣「アイツら、一度も泣いてないって」
『うん……』
広臣「俺も、お前も、家族を知らねぇのに、何かしてやれることあんのか……？」
テーブルに項垂れる彼。
『もっと、冷たい人なのかと思ってた』
広臣「あ？」
『いつもクールだからさ、あなた。
だから、もっと冷たい人なのかと思ってたけど、思い違いだった』
広臣「何言ってんだよ、急に」
『……決めた』
広臣「は？」
『私が仕事辞めるわ』
Aの言い分を理解する前に、Aが何かを決断した。
広臣は何が何だか分からないまま、首を傾げる。
広臣「良いのかよ、それで」
『ウチの店はアングラな割に良心的だから、事情を話せば分かってくれる。
それにさ、あの子たちに同じ気持ちを味わって欲しくない』
Aは幼い頃の誰も居ない部屋を思い出し、
同時に広臣もそうだった。
『だからまずは、私たちが家族にならなきゃね。
宜しくね、広臣』
広臣「……あぁ」
何が何だか話がついていけないまま、
Aはおやすみと子供たちの横に身体を横たわらせる。
『家族になっていこうね、北人、壱馬』
広臣「……寝るか」
反対側の壱馬の隣に広臣も身体を横たわらせる。
二人はたどたどしい手つきで壱馬と北人の頭を撫でると、眠りについた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 256人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りこ(プロフ) - お疲れ様でした。まじでこのお話好きすぎて終わりが悲しく感じます。とても良いお話に出会えて良かったです！ (10月9日 20時) (
レス) @page50 id: c4c1d5cc21 (このIDを非表示/違反報告)
りこ(プロフ) - なんかもう全てが尊く感じる、、、このお話大好きです！！ (10月5日 1時) (レス) @page46 id: c4c1d5cc21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪乃 | 作成日時：2023年8月18日 12時
