01 ページ1
出会った頃は、俺もお前も、警戒心が強くて親ですら信用出来なかった。
俺の親父と、お前のお袋の再婚で、兄妹になって。
けどお前はお袋の実子じゃないからって距離を置いて、孤独を選んで。
出会った頃が中一っていうガキの頃だったから、仲良くもなれず。
それは俺も同じで、実子じゃないから、
お前の「家族じゃない」って言葉に傷ついたりもしたけど。
でも、俺らに弟ができて、お前も、もちろん俺も変われた気がする。
広臣「壱馬」
壱馬「ん」
『北人、おいで』
北人「お姉ちゃん！」
まだ五歳で、両親と会えなくなった弟たち。
こっちも再婚同士で実の兄弟じゃない。
ただ、お袋の兄貴の子供たちだからって引き取ることになった。
俺らと同じで警戒心が強くて人見知りな壱馬と、
俺らと違って愛嬌たっぷりで人懐っこい北人。
学校終わりに一緒にこども園に迎えに行くと、二人が駆け寄って来た。
北人「きょうはいっしょにかえる？」
『うん、今日は四人で帰るよ』
北人「やった！うれしいねかずま！」
壱馬「……ん」
広臣「ほら、荷物取ってこい」
壱馬「わかった」
口数が多くない壱馬と、お喋り好きな北人。
それでも、二人のおかげで、俺とAは家族になれた。
『今日のご飯どうしよっか』
広臣「……あいつらに聞けよ」
『一昨日は壱馬、昨日は北人、今日は広臣だよ』
広臣「お前は？」
『その後』
広臣「……揚げナス」
『了解』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
広臣「ただいま」
『……ただいま』
北人「ただいまー！」
壱馬「ただいま……」
おかえり、と出迎えてくれる声は無い。
その声を俺たちは何年も聞いてない。
それでも、
北人「お兄ちゃん、お姉ちゃん、おかえり」
壱馬「おかえり」
先に部屋に立った二人が、その言葉をくれる。
きっと、二人の両親は出迎えてくれたんだろう。
優しい両親が。
俺たちの親と違う、優しい両親が。
きっと、両親に愛されなかった俺たちに、
誰かを愛するなんて難しいこと、できないかもしれない。
それでも、俺は、俺たちは、
確かに弟たちから誰かを愛することを教えてもらった。
･
･
これは、血の繋がりのない俺達が、家族になっていく物語。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 256人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りこ(プロフ) - お疲れ様でした。まじでこのお話好きすぎて終わりが悲しく感じます。とても良いお話に出会えて良かったです！ (10月9日 20時) (
レス) @page50 id: c4c1d5cc21 (このIDを非表示/違反報告)
りこ(プロフ) - なんかもう全てが尊く感じる、、、このお話大好きです！！ (10月5日 1時) (レス) @page46 id: c4c1d5cc21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪乃 | 作成日時：2023年8月18日 12時
