十八生 ページ19
ひとしきり撫でて満足すれば、最後にと頭を撫でる。
そして、従順な犬のように待機していたその人に手を伸ばせば、ぶんぶんと尻尾が揺れている。
…あ、この人触った中で一番筋肉質。
…というか今気付いたんだけどフードと前髪で目が見えない。
そろりと前髪を掻き分ければ、綺麗なペリドットの瞳と目が合う。
嬉しそうに細められているそれをじいっと見つめていれば、誰かの手に目を覆われる。
「見つめすぎ。
少しは逸らそうな」
ふわふわとした茶髪、閉じられた瞳は緩くカーブしている。
…逸らした方が良かったのかな。
真っ白な手袋をはめた手で頭を撫でられる。
…この人たち、ほんと撫でるの好きだなぁ…
「その子がかわえぇんは分かったんやけど、自己紹介せぇへん？
僕その子の名前も知らんねんけど。」
ゆらり、と目の前を通り過ぎた悪魔の尻尾の形をしたそれ。
…悪魔なのかな、この人は。
じぃっと見つめていれば、その人の手がこっちに伸びてきて、ぽふ、と頭を撫でられる。
アウイナイトの瞳と、深い海のような色の髪。
…草臥れたスーツの上からでもわかる細身な体。
俺が言うのもアレなんだけど、この人倒れたりしないかな。
『A君、自己紹介をしましょう。
通じないからと思わなくてもいいんです。』
えーみーるさんがそう言って、ね？と首を傾げる。
こくん、と頷けばえーみーるさんは頭を撫でてくれて、さっきのスーツの人も撫でてくれる。
「エミさん、この子言葉通じひんの？」
「えぇ、…？鬱さん、A君と会話しとりましたっけ」
「してへんけど、エミさんがさっき使っとった言葉な、聞き取ることだけは出来るんよ。」
えーみーるさんは直ぐに手を離したけど、青いスーツの人はずっと撫でている。
髪を梳くような、なんというか、優しい手つきで。
さっきの微睡みがまたやって来て、瞼が重くなっていく。
…自己紹介、しないと、いけないのになぁ…
俺はその微睡みを拒絶せずに受け入れ、スーツの人にもたれかかってまた寝てしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 366人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅蓮(プロフ) - 雨さんのお話を読んでて今まで一度も文字化けしてなかったのですが閑話休題の一番最後の言葉でゴリゴリ文字化けしてしまいました...単なるバグなのですかね、直ってほしいですね... (2020年2月15日 22時) (
レス) id: 110da38a3d (このIDを非表示/違反報告)
パピコ2(プロフ) - すごく面白いです、夢主君可愛いです！文字化けについては自分のとこは1回もなってませんので、雨さんの携帯は問題ないのではないでしょうか？ (2020年2月15日 21時) (レス) id: 193fecf580 (このIDを非表示/違反報告)
狐咬(プロフ) - とっても面白くて好きです。ばれんたいの話に一部文字化けがありました此方の不具合なら悪いのですが、確認お願いします。これからも応援してます (2020年2月15日 20時) (レス) id: 36c7a13f9b (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - コメント失礼します。番外編と二十九生に文字化けがありました。こちらはiPhoneですが、もしかしたらこちらの機種の不具合の可能性もありますが、確認をよろしくお願いします (2020年2月8日 1時) (レス) id: fa99c77dd8 (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - なんだろ……スプラトゥーンのイカガール達並に癒される………可愛い…（遺言） (2020年2月1日 20時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨と無知@雨100％ | 作成日時：2020年1月6日 4時
