人外のおせわ

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最近、上手く眠れていない気がする。

寝ようとしても色んなことをぐるぐると考え、いつの間にか朝になっている。

眠れたとしても夢見が悪かったり、ちょっとした物音で飛び起きる。

参ってきているのが自分でもわかる。



「……隈が酷いね。眠れてない？」


『……そうですね』


「…ごめんね、きっとおれのせいだ」



《寡黙な研究者》の管理を始めてから眠れなくなったけど、その当人がそんなに申し訳なさそうな顔をするから、わたしは何も言えなくなる。

いっその事、何も知らないという風を装ってくれれば良かったのに。



『……いえ、…いいえ。』
『きっと、今まで深く物事を考えなかったツケが回ってきているんです』


「……そう、優しいね」



優しい、と言われても、どう返すのが正解なんだろう。

《寡黙な研究者》と話して分かったのは、彼は案外、言葉の意味をそのまま口に出すこと。

今だって、あの言葉は皮肉では無いし、裏もない。

…裏が無い言葉を吐くから、考えなくていいのはうれしいかもしれない。



「横になっておきなよ」
「そこにあるベッド使っていいから」



いつもはだらりと伸びる袖の中にある手がすらりと伸びていて、部屋にあるベッドを指さしていた。



『……いえ、大丈夫です…』


「大丈夫、って顔じゃないけどね。」
「……まぁ、Aがいいなら、無理強いはしないよ」



そのまま《寡黙な研究者》はパソコンに向き直り、それっきり、わたしの方に向くことは無かった。

お互い無言のまま時間が進み、管理終了まで黙り込んだままだった。

部屋に戻ればベッドに倒れ、衝撃で飛び起きてしまったロトを撫でる。

ちいさくて柔らかな体は手に吸い付くようで、特にブラッシングもしていなかったけれど、毛並みはふわふわとしていた。



『…わたしはどうすればいいんでしょう』



これからどうしていこう。

今までのことが分からなくなって、これからのことも分からなくなった。

死ぬまでここで管理を続ける？

何も分からないまま？

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