43話 「五十山田(1)」 ページ43
烏間はE組校舎に戻ると、真っ先にパソコンに向かった。
五十山田Aについての情報を探るためだ。
(A「きっと私は、卒業までここに居られないから」)
そう言ったAはどこか寂しそうだった。
とても儚げで、中学生が出していい雰囲気ではなかった。
だからこそ調べた。
その結果、Aの一家が政府のデータベースに載っていた。
その情報に烏間は衝撃だった。
烏間(あの子供は、一体何を考えて……)
内容は衝撃だった。
だが、これは彼女が話さない以上、こちらが話せる内容じゃない。
烏間は静観することに決め、これからの二学期の訓練の内容を考えた。
烏間はこの時気づかなかった。
この内容にはまだ続きがあることを。
──────────
Aは一人本校舎の階段を上っていた。
途中、夏期講習に来ていた生徒たちとすれ違うが、彼らはAに怯えて一切関わろうとしない。
Aの目的地はすぐそこの、理事長室だった。
A「失礼します」
學峯「待ってましたよ、五十山田さん」
浅野「待っていたよ、五十山田」
中には理事長と、生徒会長である浅野学秀が待っていた。
知っての通り、二人は親子だ。
A「わざわざ夏休みに呼び出した理由は？」
學峯「E組を抜ける気は？」
A「私をE組送りにしたあなたがそれを仰るのですか？
とても面白い冗談ですね」
Aは二人に臆することなく向かい合う。
A「あなたに言われた通りの仕事はやりますよ。
ただ今はその時じゃない」
學峯「ほう？何を基準に判断しているのか知りたいですね。
浅野くんはもう下がってくれていいよ」
浅野「僕が聞くのはいけない事ですか？」
學峯「彼女が誰にも聞かせたくないと強く希望しているんだ」
A「誰かに知られるのは好きじゃない」
Aは浅野にそう言い切ると、彼は気に食わなさそうな表情のまま理事長室を出ていく。
そして残った二人。
A「あのタコは環境の変化に弱いということと、生徒が弱点です。
私の中の計画はほぼ完成していますが、問題は烏間惟臣。あいつは人間を辞めてる」
學峯「おや、君の口からその言葉が出るとはね」
A「それは置いといて。
きっと烏間惟臣は私の情報を調べた頃合でしょうし、この後そちらにも寄ろうかと思いますが、少なくとも私の作戦は十二月までに予定します」
そう言ってAは立ち上がる。
學峯「期待しているよ、────」
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年11月2日 16時
