30話 「作戦(4)」 ページ30
A「私は、私や外でバテてる生徒を含むE組28名の命、でも賭けようか」
Aのその言葉に、律が繋げていた音声が外の人達の表情も変える。
吉田「な、何言ってんだよあいつ！」
寺坂「何考えてんだ」
磯貝「殺せんせー」
殺せんせー「律さん、中の状況は？」
律は言われて、片岡のスマホをバイブレーションで合図をし、中の状況が見えるようにセットした。
業「……A」
業が祈るように画面を見ていると、ライフはサイコロを振った。
もしこれでAが負けてしまえば、E組は糸成以外死ぬ。
勝てば、ライフが死ぬ。
Aはどちらを選ぶのか。
──────────
ライフ「選べよ」
A「半」
ライフ「悩まねぇな」
Aは考えもせずに言い放つ。
サイコロを開くその瞬間、全員が緊張する。
出目は、三。
Aの勝ちだった。
A「私の勝ち。
さぁ、ここを通させてもらおうか」
Aは生徒たちに顎で合図すると全員がここを動き出した。
その最後尾を行こうとしたAをライフは呼び止める。
ライフ「何で半が出ることに賭けた？」
A「サイコロに蓋をしたのが誰か忘れた？」
ライフ「っ」
蓋をするその瞬間、誰もAの手元を見ていなかった。
つまり、その瞬間に勝敗は決まっていたのだ。
A「イカサマにはイカサマを返す」
Aはそれだけ言い残して歩き出した。
──────────
ホール内部からロックを解除してドアを開けた女子組。
全員で合流すると、茅野がAに問いかけた。
茅野「どうしてあそこで私たちの命を賭けたの？」
A「勝つ自信しか無かったから」
片岡「勝つ自信って……相手は殺し屋」
A「そのプロ根性に賭けた。
おかげで相手は動揺してくれた。たかが中学生の私が、他人を巻き込んでチップを積んだから」
Aは立ち止まると生徒全員を見る。
そこには着替えた渚が業たちに弄られているが、Aは笑って答えた。
A「あそこには他にも遊び道具が沢山あった。
けど、相手がイカサマを仕掛けてくるのはトランプかサイコロ。だから時間のかからない丁半博打で終わらせた」
業「相手に仕込まれてるかもしれないそれに？」
A「私自身手持ちにサイコロがあった。
確率が半々のモノに大量のチップを賭けるほど、私も馬鹿じゃないのよ」
Aはそう言って歩き出す。
余計に彼女の謎が生まれた。
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年11月2日 16時
