11話 「プール(2)」 ページ11
ほとんどの生徒が苦笑いを浮べる中、倉橋の水掛けによって殺せんせーが思わない悲鳴をあげたのだ。
殺せんせー「ひゃんっ！！」
それを面白がらないわけが無い業は椅子を揺らして落とそうとする。
だが、これに気づかないほど馬鹿じゃない。
殺せんせー「いや、別に泳ぐ気分じゃないだけだし〜。
水中だと触手が膨張して動けなくなるとかそんなんじゃないし〜」
殺せんせーは泳げない。
今までで最も有利な弱点だろう。
三村「手にビート板持ってるし、てっきり泳ぐ気満々なのかと……」
殺せんせー「これはビート板じゃありません！麩菓子です」
「「おやつかよ！」」
いつも通り気の抜ける暗殺教室。
Aは木の下で体育座りをしながら生徒たちを見つめる。
すると、業が隣にやって来た。
業「行かないの、あっちに」
A「うん、行かない」
業「もう少し馴染めば良いのに」
A「……苦手だよ」
Aは幼い頃から話すのが嫌いだった。
だが、業とは波長が合って比較的、早いうちから打ち解けることができた。
だから彼とは食事でも、ちょっとしたプライベートでも会うことができる。
それでも、彼以外とは話すのは嫌いだ。
それから、泳ぐのも嫌いだ。
A「入ってきたら？」
業「ちょっと休憩」
A「……するほど動いてないくせに」
業「ははっ」
業は水筒の麦茶を飲みながらAの隣に座る。
業「今度は一緒に行こうよ」
A「……見てるだけがいい」
業「俺が隣にいるから」
業の方を見ると、彼は優しい表情を浮かべてAを見ていた。
A「……すぐ上がれる場所でね」
業「分かった」
話すのが苦手なAには、あまり口数が多くなる会話を出さないように業は努めていた。
どんな内容であれ、Aと話すのは、嫌いじゃないから。
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作者名：塩こんぶ | 作成日時：2022年11月2日 16時
