※クロスオーバー注意 ページ47
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どさ、と音もなく前のめりに倒れた今の俺は、はたから見たら相当間抜けに見えてるだろう。何よりも、護衛に頼んだ山姥に「後片付けは俺がやっておくからさっさと休め」と手入部屋から追い出されたので、いまの俺には護衛がいない。
つまり、命を狙おうとすれば狙える、まさに好機の状態なのである。
やばい、詰んだ。
一刻も早く立ち上がって自室に行きたいが、どうやらさっき転倒したせいで体全身の力が抜けてしまったらしく、思うように動いてくれない。辛うじて首だけは動かせたが、これじゃあ只の生きる屍だ。
「あー…床、埃まみれだ…手入終わったら磨いとかないと…」
床特有の冷たい感触を肌に感じながら、舌足らずな声でそんなことを呟く。外はしんしんと雪が降り始めていた。
なるほど、どうりで寒いわけだ…。
次第に意識も朦朧としてきて、そろそろ誰か呼ばないと凍死しそうだなと考え始めた時。
奥側から、ぎしりと、明らかに俺のものではない床板を踏む音が聞こえた。
廊下で倒れている俺に気付いたのか、床を踏む音が大きくなって、心做しか…早くなっている気がする。
やがて、その音は俺の前で止まり、僅かに息切れをおこしているかのように思える。もしや走って来てくれたのだろうか。
「やまんば……?つるまる…?それとも…から…か?」
返事はない。ということは、彼ら以外の、手入していない刀剣だろうか。
だとすれば、殺されるのだろうか。
それは少し…いや、かなり困る。
「……ころさ、ないでくれ……」
絞るようにして出た声は、そんな情けない声だった。仮にも審神者である俺が、刀剣に懇願する姿など、滑稽でしかない。
けれど、次々と、溢れるように言葉が出てきて、止まらない。
「…あと…ちょっと…なんだ……あとすこしで……きっと…みんな……げん、き…に…」
「もういい、喋るな…」
声からして、傲慢そうな性格な刀剣だということが伺える。ふわりと身体が浮いたかと思えば、そのまま横抱きにされた。
「仮にも男だぞ、お姫様抱っこって……」などと、ぼやく気力もなく、ただ俺を持ち上げただろう刀剣に身を委ねるしかない。
傷物を扱うかのように俺の髪に触れた彼は、「あんたの部屋は何処だ」と聞くので「そのまま…まっすぐいって…つきあたりの…とこ…」と答えれば、ゆっくりと歩き始めた。
その揺れが、彼の腕の中が何処か心地よくて、安心できて…
「あった…かい…な」
そう呟いたのを最後に、俺の意識は飛んだ。
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翠輝 - 賢治姉のキャラクターに引き込まれました。面白かったです、是非続きをお願いします。 (2016年9月26日 22時) (レス) id: bfcd9a4d58 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - おらん時さん» お姉さんの怪力は元という設定でいきたい(真顔)←異能力はまた別のやつです←コメントありがとうございます! (2016年7月20日 6時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
おらん時(プロフ) - デコピンに思わず笑ったぜ←…ん?賢治のお姉さんも賢治くんと同じ異能なのかな、じゃないと、あの賢治くんが悶えるだなんて…。新奥義(笑)私の新奥義はねぇ…h(ry← (2016年7月20日 1時) (レス) id: 07a8919c5f (このIDを非表示/違反報告)
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