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「またその本か」
「ええ。この本、なんだか好きなの。お気に入りよ」
Aはそう言って嬉しそうに本を抱える。その本は、Aが記憶を無くす以前にも気に入って読んでいた本だった。
他にも、以前気に入っていた音楽だとか、以前気に入っていたワンピースだとか、それらを「なんだか好きなの」と言って彼女は気に入っていた。
記憶を無くす前のAの面影が残っているのが辛い。いっそのこと彼女を別人だと考えて接しようとも考えたが、長年彼女を想ってきたドラコに、過去の彼女を捨てるなどできやしなかった。
退院後、ドラコはAを家に連れて帰った。
不幸にもAの両親は亡くなっており、彼女に身寄りはなかったのだ。
過去の罪滅ぼし、とでも言おうか。いや、こんなことでは罪滅ぼしの一つにもなりやしない。
彼女は、亡き両親を想うことができない。愛情を注いでくれた両親の記憶もないのだから。
折角必死に頑張ってきた勉強も、新体操も、水泳も、バレエも、ピアノも、ヴァイオリンも、何一つと覚えていない。
今の彼女には一般教養しかない。彼女の努力がすべて無くなってしまったようで、その喪失すらもわからないAの笑顔を見るのが、ドラコは1番辛かった。
ホグワーツで亡くなった友人を弔うことも、過去の友人を懐かしむことも、友人と会話を楽しむこともできない。
今、彼女にはドラコしかいない。
ドラコは、せめてこれからのAの生活が幸せなものになればと、Aに不自由ない生活を与え続けた。
今まで酷いことばかりをしてしまったから、これからはたくさん愛情を注ごうと。
自分勝手かもしれないけれど、過去のドラコ・マルフォイの無礼な態度は忘れてほしい。これからは、君の思うままに動くから、だから、嫌わないで。
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ぽれ(プロフ) - 貴方の作品が本当に好きです。話数は少なめなのにそれに劣らない綺麗な言葉選びに登場人物の心情表現が本当にずば抜けてて普通に泣けました。ありがとうございます……、 (1月24日 0時) (
レス) id: aeee7d47d3 (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - ドッ…ドッ…ドラコォ…。最高です、更新頑張ってください。 (2021年10月17日 23時) (レス) @page11 id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：深海
| 作成日時：2021年10月10日 20時
