お兄ちゃんはプロ野球選手 3

# 116 ページ16

(坂本勇人side)


Aを探すと、また人気のない廊下の
隅っこで座り込んで小っちゃくなってた。


俺が近寄ると気づいて目を上げるが、
うつむく。

かまわずAの前にしゃがむと、
膝を抱えたままちょっとだけ離れる。

手を伸ばしてその小さな頭に触れた。



勇人「慎吾と喧嘩したんやってー？」


単刀直入にそのまんま聞いた。
前置きなんか、いらんと思ったし。
こいつに誤魔化しは通じひんから。



「……うん、」

勇人「何で喧嘩になったん？」

「…慎吾に聞いて、」

勇人「俺はAに聞いてんねんで」

「……」



わかってるよ。
慎吾の話したら、泣いてまうから言いたくない
ねんな？
もう、すでに泣いてるしな。



「…慎吾って、そんなに忙しい？
私なんか気にならなくなっちゃうくらい？」

勇人「…何でそう思うん？」

「久しぶりに会えて嬉しいのは私だけなのかなって、…
今日は、いっぱい時間があるはずで…
慎吾もゆっくりできるかもって思ってたのに、
ずーっとどこか行ってて。

わがままなんか言っちゃダメだけど…
わかってるの、でも、」



泣きじゃくるAを引っ張り抱きしめた。



「ほんとはっ…
慎吾ともっと一緒にいたかったの〜……」

勇人「うん、ようこらえたな、えらいで」

「ふえ〜ん…はーくん、っうえ、っ」



やっぱりAにとっては
何よりも1番が慎吾やねんな。

慎吾と一緒におる時間が、ほんまに
大切やってんや。

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