QKと娘ちゃん

おかえりを言いたくて ページ22

izw side


やる気が出ない訳じゃないけど、何となく億劫になる日がある

それがたまたま今日で、たまたまテレビの収録が立て続けにある日だった


朝イチでAをオフィスまで連れて行って、急いで局へ入る

ヘアメイクをしてもらいながら台本を読み直し、出番が来るのを待っていた



今頃Aは何してるかな〜

もう俺と離れてオフィスに居ることにもすっかり慣れて最近は「帰るの嫌！」って言うくらいになったな〜


俺の頭の中はA5割、仕事4割、その他1割くらいで出来てるんじゃないかってくらい暇さえあればAのことを考える


気分が妙に乗らない今日は余計にだ


スマホを開き、写真フォルダから約1年前の動画を再生する


『わ〜！Aちゃん上手上手！！
パパ見て見て！！
ハイハイが出来るようになったよ！』


聞こえてくる嬉しそうな妻の声と、まだ赤ちゃん顔なAが一生懸命に手足を前に動かしている動画

仕事中にこの動画が送られてきてどんなに嬉しかったか


もう少しフォルダを進めたら歩き始めた頃の動画、意味ある言葉を話した動画など妻が撮ってくれたものが沢山保存してある


この動画を見て「Aも頑張ってこんなに成長してくれたんだなぁ」と俺もまた頑張れる


「伊沢さーん、お願いします！」

スタッフさんに呼ばれ、返事をしながらスマホを閉じる


伊沢「…よし、頑張ろ！」



＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



時刻は22時

予定よりも随分遅くなってしまい急いでオフィスに戻った


河村「お疲れ」

伊沢「遅くなりました…」

河村「Aちゃんもうソファで寝てるよ
20時くらいに寝たから夜中起きるかも」

伊沢「分かりました、河村さん遅くまでありがとうございます」


河村「いいよ、これくらい
それから…これ」

伊沢「折り紙？」


クリアファイルに挟まれた大量の折り紙たち

マジックで顔まで書いてある動物のものや、ちぎって貼った作品まで様々な物が挟まれている

決して綺麗な完成度とは言えないけど子供らしいものが出来上がっていた


河村「楽しそうに作ってたから褒めてあげてね」


河村さんは「戸締りよろしくね」と付け加えて出て行った


クリアファイルをカバンにしまい起こさないように娘を抱える

外は寒いから風邪ひかないといいけど…

そんなことを思いながら少し赤くなっている頬を撫でた


可愛い寝顔を見てたら今日の疲れなんて全部吹っ飛ぶ


明日も頑張ろう、そう思えた

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