好きなだけ、それだけ２ (ページ14)

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杏奈「あ、あのね。 Aちゃん。」

今気づいたけど、杏ちゃん。なにか後ろに隠してる？

杏奈「これ..」

「え？」

隠していたものを、私に差し出してきた杏ちゃん。

メモ帳みたいなものを渡された。

なに？

杏奈「今日侑ちゃんがAちゃんのお家にお邪魔するって聞いて。」

顔を真っ赤にして、話し出した杏ちゃん。

私も行くとか言うのかな。

それは勘弁。敵を自分の陣地に入れるわけにいかない。

それに大ちゃんだって嫌がるだろう。

杏奈「Aちゃんがご飯とか作るんだよね。」

「そう、だけど…」

杏奈「これ、侑ちゃんの好きな食べ物とか書き出してみたんだ！」

「..え？ ...あ、そ、そうなんだ！」

思わず口から出てしまった本音。なにを言ってるの？

私は修正し直すように、笑顔で相づちを打った。

杏奈「侑ちゃんが好きって言ったものを書いたの。」

同じこと、二回も言わないくていい。聞きたくない。

なんで杏ちゃんが私に侑李のことを教えるの？

杏奈「だからこれ参考にしてくれたらなーって思ったんだ。」

首を傾げる仕草。私には苛立ちでしかないのわからない？

役に立ちました私？ってことですか？ちょっとよく分からないんですけど。

杏奈「Aちゃん？」

うまく言葉が出ない私。

今の彼女に〝ありがとう〟なんて言ったら負けた気がする。

もともと全てにおいて負けているのに最後の一言で、一気に差が開く。

「貰っておくね。」

杏奈「うん！」

いまの私にとって彼女の笑顔は、苦痛でしかない。

こんな紙、破り捨てちゃいたい。