episode.74 ページ24
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阿部side
重たい気持ちはどこへやら、根本的なことは何も解決していないのに、なんだか気持ちが少し軽くなった気がする。
ここに来れば、ひとりじゃない、そう思えるからなのかな。
なんてことを考えながら、診察を終えて中待合室で待っている。
穿刺針とか色々ね、貰わないといけないから、ここで待っててねって看護師さんに言われて大人しく座ってる。
別にダメじゃないんだけどなんとなく、こういうところで携帯をいじるのってなんか気が引けて、何をするでもなくただボーッと壁のポスターを見ながら過ごしていると、ここではあまり聞き慣れない、子供の泣く声が耳に届いた。
『っ、やだっ、！出れるっ、！できる、っ、、なんで、、』
盗み聞きするつもりなんて無かったんだけど、どうしても意識が持っていかれて声のする方へ視線をやると、お母さんと看護師さんに宥められてる小学生くらいの男の子の姿。
俺ですら若いと珍しがられるこの外来で、彼のような小さな子は初めて見かけた。
初めはお母さんについてきただけかと思ったけど、傍に置かれたリュックにぶら下がる青いカードを見て、彼も俺と同じ疾患を抱える仲間なんだと分かった。
母「実は明日、ダンススクールのコンテストなんです。この子いつも以上に張り切っちゃって、レッスンの途中に今まで外では無かったような低血糖を起こして…そしたら先生に、『何かあったら責任取れないから、明日は外れて欲しい』って言われてしまって。
この通り今はもう平気なんですけど、先生にそう言われた以上、こちらもどうしようもできなくて…」
看護師さんに事情を説明するお母さんの言葉に、心臓がぎゅっ掴まれるような、苦しくてどうしようもない気持ちになった。
看「次があるよ！ね？元気出して、また頑張ろう！次はいつコンテストなのかな？」
あぁ、そんなこと言ったら、彼はもっと辛くなるのに。
俺は、受け取って以来一度も取り出したことのなかったあの青いカードを財布から探した。
診察室を出て目の前を通り過ぎようとする先生を呼び止めて尋ねる。
「…あの子と、話してみたいんですけど…」
お節介なのも差し出がましいのも分かってた。
でも、全てが俺と重なって、居ても立ってもいられなかった。
だってこの場で、泣きじゃくる彼の気持ちを一番分かってあげられるのは、俺しかいないんだから。
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ストロベリー - 3早く読みたいです 頑張れ〜 (2023年4月2日 21時) (
レス) id: 78d64c6e31 (このIDを非表示/違反報告)
円周率 - いつも楽しく読まさせていただいています。3のほうも読みたいと思っているのですがパスワードを教えてもらうことは可能でしょうか？ (2023年3月8日 6時) (レス) id: 6ee190949a (このIDを非表示/違反報告)
みどり - 続き気になるので、楽しみに待ってます (2022年11月26日 1時) (レス) @page45 id: 1e919caffa (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ちゃんと他のメンバーに支えられながらライブできるといいですね、、、 (2022年7月25日 1時) (レス) @page38 id: 436e54c814 (このIDを非表示/違反報告)
あお - このお話大好きです！更新待ってます、頑張ってください！ (2021年10月13日 15時) (レス) id: b9c7362213 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年5月23日 22時
