episode.64 ページ14
*
深澤side
『もうこれ以上阿部ちゃんを傷付けないように』
そんなこと、都合の良い綺麗事だったと気付くのにさほど時間は掛からなかった。
人はある程度成長すると相手を気遣う思いやりを覚えるけど、さらに歳を重ねると時としてそれは思いやりではなく自己防衛に姿を変えてしまうことがある。
まさに今がそれだった。
阿部ちゃんを傷付けたくない気持ちに嘘はないけど、それは『自分が阿部ちゃんを傷付けた』と思いたくなかっただけ。
素直で正直な最年少に感心させられることはよくあるけど、今回ばかりは情けなくて恥ずかしくて、返す言葉が見つからなかった。
瞳いっぱいに涙を溜めて絞り出すように溢れた彼の精一杯の『やめて』という声。
いったい俺らは何度阿部ちゃんを傷付けたら気が済むのだろうか。
「あ、ごめっ、」
阿「、なんで、、」
「、、え？」
阿「、、っ、なんで、知ってんの、、」
一瞬意味が分からなくて、その言葉が肯定を意味するものだと理解するのに、ほんの少しだけ時間が要った。
「え、、阿部ちゃん、、？うそ、、」
あまりの衝撃にみんなが固まってしまったその雰囲気に耐えかねてか、阿部ちゃんは下唇を噛んだまま顔を逸らした。
逃げるように伏せた瞳からは、もう堪えることができなくなった涙が流れていた。
「阿部ちゃん、、こんな聞き方しかできなくて、嫌な聞き方して、ごめん、、
だけど、もう同じこと繰り返さないって、阿部ちゃんのこと傷付けたくないって、俺達そう決めたんだ。
一回だって許されることじゃないのは分かってる。
でも、もし許してもらえるなら、これからもずっと一緒に頑張っていくために、俺達に教えてくれない？」
意を決して開いた口からは、思っていたよりもずっとスラスラと言葉が流れた。
阿部ちゃんに届いたかどうか分からないけど、静かに流すだけだった涙が、嗚咽混じりの号泣に変わっていった。
阿部ちゃんの隣に座るなべが、少し気まずそうにその背中に手を伸ばし、優しく摩り始めた。
さっきの阿部ちゃんと同じように下唇を噛み締めて、俯きがちな顔は眉間に皺を寄せている。
きっとものすごく後悔しているんだろう。
もちろんなべだけが悪いんじゃないんだけど、人一倍責任を感じてたからね。
そんななべの手から優しさが伝わったのか、しゃくり上げながらも少しずつ阿部ちゃんの声が聞こえてきた。
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ストロベリー - 3早く読みたいです 頑張れ〜 (2023年4月2日 21時) (
レス) id: 78d64c6e31 (このIDを非表示/違反報告)
円周率 - いつも楽しく読まさせていただいています。3のほうも読みたいと思っているのですがパスワードを教えてもらうことは可能でしょうか？ (2023年3月8日 6時) (レス) id: 6ee190949a (このIDを非表示/違反報告)
みどり - 続き気になるので、楽しみに待ってます (2022年11月26日 1時) (レス) @page45 id: 1e919caffa (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ちゃんと他のメンバーに支えられながらライブできるといいですね、、、 (2022年7月25日 1時) (レス) @page38 id: 436e54c814 (このIDを非表示/違反報告)
あお - このお話大好きです！更新待ってます、頑張ってください！ (2021年10月13日 15時) (レス) id: b9c7362213 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年5月23日 22時
