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episode.56 ページ6

*
阿部side





昨日の夜は全然眠れなかった。



もともとメンタルが強いほうではなかったけど、今回の入院、そしてそのきっかけとなった出来事は、俺の心を更に弱くするには十分すぎる出来事だった。



マネージャーさんにもどんな顔で会ったら良いのか分からなくて、仕事の時はすっかり乗ることのなくなった電車で事務所まで向かった。



目を瞑っても辿り着けるくらい通った道なのに、進める一歩が重くて怖くて堪らなかった。



集合時間の5分前、稽古場のドアを前にしてまた立ち止まる。



ここを開けたらみんながいる、そんな何でもない当たり前の事実が、今日ばかりは恐ろしかった。








でも、いつまでもこうしてはいられない。


できるだけ音を立てないようにそっとドアを開けて顔だけを覗かせる。


聞こえるか聞こえないかの小さな声で

” おはようございます “

思いの外静かだったメンバーが一斉にこちらを向いた。



一瞬後退りしてしまいそうになったけど、何事もなかったかのような変わらない笑顔を向けてくれた目黒を見て、みんなの輪の中に足を踏み入れることができた。






「あのさ、少しだけ、いい?」





わかりやすく背筋を整えるメンバーの姿に、久しぶりに少し笑えた。







「まずは、急に2週間もお休みしてしまって、経緯も何も伝えないまま迷惑だけかけてしまって、本当にごめんなさい。



今日は、聞いて欲しいことがあって…



実は、、、



病気が見つかって。」





視線の先に映るメンバーは、今まで見たこともないような顔をしていた。


本当は病名までストレートに打ち明けるつもりだったんだけど、みんなの顔を見たら言えなくなってしまった。


弱りきった心に蓋をして、明るく振る舞えるようにスイッチを入れる。





「それが分かったのは、滝沢歌舞伎の千秋楽に出られなかったときで、

みんなに心配かけたくなくて、隠してるつもりだった。

でも、結局隠しきれないのに体調が良くないことも言い出さなくて、みんなの雰囲気悪くして。


本当に、ごめんなさい。」



頭を下げて俯きながら次の言葉を探していると、向かい側から不安げな声がした。







ラ「…治るんだよね…?」




顔を上げると、真っ直ぐな目で俺をを捉えるラウールの姿。





ラウ、ずるい先輩でごめんな。






「ちゃんと薬を使えばみんなと何も変わらないから、だから安心して?」






俺は、上手に笑えてただろうか。

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ストロベリー - 3早く読みたいです  頑張れ〜 (2023年4月2日 21時) (レス) id: 78d64c6e31 (このIDを非表示/違反報告)
円周率 - いつも楽しく読まさせていただいています。3のほうも読みたいと思っているのですがパスワードを教えてもらうことは可能でしょうか? (2023年3月8日 6時) (レス) id: 6ee190949a (このIDを非表示/違反報告)
みどり - 続き気になるので、楽しみに待ってます (2022年11月26日 1時) (レス) @page45 id: 1e919caffa (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ちゃんと他のメンバーに支えられながらライブできるといいですね、、、 (2022年7月25日 1時) (レス) @page38 id: 436e54c814 (このIDを非表示/違反報告)
あお - このお話大好きです!更新待ってます、頑張ってください! (2021年10月13日 15時) (レス) id: b9c7362213 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しぃ | 作成日時:2021年5月23日 22時

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