episode.66 ページ16
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佐久間side
俺も、居ても立っても居られなくなって、阿部ちゃんの側に駆け寄った。
見かねてスペースを空けてくれた照とラウに目線でありがとうを伝え、俺は横にしゃがんでそっと両手を取った。
「、阿部ちゃん、、」
声を捉えて目線を辿る、それだけの動作が、どこか辛そうに見えた。
握った手から伝わる温かさは泣いたからじゃない、瞬時に阿部ちゃんの状況を理解した。
「ねぇ阿部ちゃん、調子悪いっしょ?ちょっと休みな?」
俺の問いかけは図星なようだったけど、言いづらそうに、迷うように阿部ちゃんは言った。
阿「、ん、ごめん、ちょっと、、でも、、その、」
休憩くらい遠慮しなくても良いのに、そう思っていると、次に発せられた言葉でようやく納得した。
阿「、色々、やらなきゃで、みんな、驚かせちゃうかも、、です、」
昨日みんなで話をしたあと、気になってラウの言う病気について調べたんだ。
指に針を刺して出した血で数値を測るとか、自分で注射を打つとか、そういうのは結構衝撃だったから頭に残ってる。
『色々やらなきゃ』なことってきっと、そういうことなんだと思う。
正直心臓はバクバクだけど、努めて冷静に声を掛けた。
「どうしても嫌だったら無理にとは言わないけど、これからのためにも隣にいちゃだめ?ひとりだけでも良いから、、」
俯いて目を伏せて数秒、ふぅっと小さく息を吐いた阿部ちゃんは、覚悟を決めたような目で俺を見た。
阿「…ひとりずつなら、」
めちゃくちゃ勇気いることだよね。
もう一度包んだ両手をキュッと握って、ありがとうって伝えた。
メンバーの方を向き直って、誰が一緒に居ようかと問おうとすると、俺が言うより先に『佐久間、頼める?』と。
みんな阿部ちゃんが心配で、自分が隣で居てあげたいはずなのに。
「おっけ、分かった。」
立ち上がって阿部ちゃんの背中に手を添えながら、大丈夫?立てる?そう聞くと、
阿「大丈夫だって、心配しすぎ。笑」
目尻に皺を寄せて笑う俺の好きな顔、久々に見たかも。
なんて思ったのも束の間、椅子を離れた阿部ちゃんは危なっかしいくらいフラフラしていて、『やべ』なんて言いながら壁に手をついた。
「ねぇちょっと、どこが大丈夫なの、、!」
阿「ごめんって、でも、珍しいことじゃないから。」
“ 珍しいことじゃない “
阿部ちゃんが抱えるものの大きさが、ほんの少しずつ、見えた気がした。
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ストロベリー - 3早く読みたいです 頑張れ〜 (2023年4月2日 21時) (レス) id: 78d64c6e31 (このIDを非表示/違反報告)
円周率 - いつも楽しく読まさせていただいています。3のほうも読みたいと思っているのですがパスワードを教えてもらうことは可能でしょうか? (2023年3月8日 6時) (レス) id: 6ee190949a (このIDを非表示/違反報告)
みどり - 続き気になるので、楽しみに待ってます (2022年11月26日 1時) (レス) @page45 id: 1e919caffa (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ちゃんと他のメンバーに支えられながらライブできるといいですね、、、 (2022年7月25日 1時) (レス) @page38 id: 436e54c814 (このIDを非表示/違反報告)
あお - このお話大好きです!更新待ってます、頑張ってください! (2021年10月13日 15時) (レス) id: b9c7362213 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しぃ | 作成日時:2021年5月23日 22時