episode.35 ページ35
*
深澤side
あのMV撮影から数日、俺は阿部ちゃんに声をかけるタイミングを伺っていた。
まぁ、いつでも話せると言えばそうなんだけど、いかに違和感なく、且つ他のメンバーに気が付かれないようにとか俺なりに色々考えててね。
そしてやってきた絶好のタイミング。
この日はラジオの収録で、阿部ちゃんと俺ふたりきりの現場だった。
ふたりのときは割と真面目な話もするし、突然切り出しても怪しくはないだろう。
控え室、俺の向かいに座って、タブレットや参考書を開いて勉強中の阿部ちゃんに声を掛けた。
「阿部ちゃんさ、」
突然名前を呼ばれて驚いたように顔を上げた阿部ちゃん。
阿「なに急に、どうしたの？」
こんなとき、いつもなら笑いに走る俺だけど、めめとラウと約束したから今日は真面目にね。
「もう、身体は大丈夫なの？」
驚いた顔をする阿部ちゃんに、俺は続ける。
「心配なのよ。歌舞伎の時あれだけ辛そうだったのに、それ以来いっこも弱音吐かないからさ。
ひとりで我慢してないか、ちゃんと確かめておかないとと思ってね？」
少しだけ、考えるような、迷ったような顔をした後、阿部ちゃんは少しずつ話をしてくれた。
阿部side
ふっかに突然真面目な顔で尋ねられて驚いた。
この聞き方、気になっているのはふっかだけじゃないと直感で分かった。
きっと何人かが俺の行動に違和感を感じていて、俺が聞いてみるってふっかが言ったんだろうな。
だとしたら、何でもないと言い張る方が怪しい。
返事に迷うフリをして瞬時に考える。
「ごめん、また迷惑かけちゃってるかな…？」
深「んーん、そうじゃないの。我慢しちゃって辛くなっちゃったらやだなって思っただけ。
ラウがね、最近阿部ちゃんすぐトイレに消えちゃうからお腹痛いのかなって心配してたってのもあるかな。笑」
あー、やっぱり気付かれてるんだ。
そして俺はまた、嘘をつく。
「体調崩した時さ、すごい体重落ちちゃったじゃん。
なかなか自力で戻せなくてね、ちょっとお医者さんの力を借りてるって言うか。
薬じゃないんだけど、ご飯の前に飲むサプリメント？栄養剤？みたいなのがいっぱいあって、ちょっとみんなの前で飲むの気が引けちゃってね。」
深「そっかそっか。キツかったりはしてない？」
心配そうなふっかに、“ 超元気 ”とピースサインを向ける。
重なり続ける嘘に、心が痛んだ。
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
