episode.29 ページ29
*
阿部side
なんとでもなれ、そう思ったものの、怖さや後ろめたさが無かったわけではない。
お医者さんの言うことはもちろん理解している。
治療を欠かしてはいけないことも分かってる。
だけど、正直まだこの状況にピンときてもいない俺は、仕事が何よりも最優先だった。
仕事を犠牲になんて、できないよな。
半ば言い訳のように自分に言い聞かせ、全てを忘れるようにメンバーとのBBQを楽しんだ。
なんだ、意外となんてことないじゃん。
大盛り上がりでBBQを終えると、今度はスタジオに移ってみんなで思い出のシーンやお気に入りの場面を当てる企画だったんだけど…
深「はい！それじゃあ次は阿部ちゃん！何かヒントとかありますか？」
なんだろう、すっごくボーッとする。
頭がふわふわして動悸がして気持ち悪い。
深「おーい！阿部ちゃんの番ですよーー！！って、聞いてる？！おいあべぇ！！」
ふっかの大きな声でハッとした。
「ごめんごめん！ボーッとしてたわ！」
明るく答えたつもりなのに、思っているよりも声が張れない。
向「ちょっと阿部ちゃん、BBQではしゃぎすぎたからってこっちで休憩するのなしやで！！」
メンバーのフォローもあってなんとかその場を凌ぐことが出来たけど、頭が回らなくて面白いことも言えず、正解も出せず、あまりにも不完全燃焼な撮影になってしまった。
撮影後、やはり変だと思われていたようで、目黒に声を掛けられた。
目「阿部ちゃん、ボーッとしてたけど大丈夫？外暑かったし熱中症かな？これ。」
差し出してくれたのはスポーツドリンク。
倒れたあの日も脱水症状を起こしていたことを心配して持ってきてくれたんだろう。
だけどこれも、注射を打たないと飲んではいけなくて。
「ありがとう、後で貰うね？」
目「だめ、また倒れちゃうから飲むまでいる」
逃げられなかった…
とにかく怪しまれたくなかった俺は意を決してそれを流し込み、慌ててトイレに駆け込んだ。
専用の針で指先から血を出して簡単な採血をする。
「、、うわ、、やっべ、、」
お医者さんに指示された数値を何倍も上回る数字がそこには示されていて、見るだけで頭がクラクラした。
注射をサボるとこんなことになるんだ。
今更遅いと思いながらも、慌てて注射を打った。
「っ、、いったぁ、」
俺、隠れて何やってんだろう。
妙に虚しくなった。
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
