episode.26 ページ26
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阿部side
１週間ぶりの仕事、どうしようもなく胸がざわざわして落ち着かない。
千秋楽に出られなくて迷惑をかけてしまった後ろめたさだけじゃない。
これから先の人生、否応無しに行わなければならない、終わりのない治療の始まり。
他のメンバーとの間に見えない壁があるような気がして、自分一人だけ別な世界を生きているような気分になった。
もちろん休み中にだってメンバーやスタッフさんには謝罪のメッセージを送っていて、みんな気にすることないと優しく言ってくれていた。
それでも罪悪感と不安な気持ちはどうしても消えなくて、俺は撮影の前にもう一度みんなの前で謝罪をする。
これはもう、みんなに対してどうとかじゃなくて、自分の心を痛めつけて罪悪感を掻き消そうという自己満足でしかなかった。
もうすぐ撮影が始まるというのに、どうしても気持ちを切り替えられず、きっとそれが顔に出てしまっていたんだろう。
ひとり少し離れたところにいた俺に、照が近づいてきた。
照「阿部、ちょっといい？」
そう声を掛けられ、やはり咄嗟に謝罪の言葉が口をついて出てしまう。
照「もういいからそれ。」
低い声でそう呟かれると、一瞬で体が強張るのが分かった。
それに気づいてか、照は慌てたように怒ってるんじゃないって言ってくれたけど、ただでさえ不安定な俺の心にはそのダメージは大きかった。
雰囲気を変えようと話題を変え、たくさん食べろよと小突いてきた照の手は、ペン型の注射器を突っ込んだポケットに触れた。
「お前、まさかここでも勉強するつもり？ペン持ち歩いてんの？」
頭の中はもはやプチパニック。
上手な受け答えも思いつかなくて、きっと相当引き攣った顔をしていたと思う。
その瞬間、照の表情が少しイラついたように見えたのを俺は見逃さなかった。
やばい、怒らせた。
これ以上雰囲気を悪くするわけには行かない。
必死で作った笑顔を張り付けて、周りに怪しまれないだけのテンションに持ち上げた。
だけどふと、虚しくなる。
なんでこんな気持ちでカメラの前に立ってるんだろう。
俺、何か悪いことしたっけ。
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
