episode.16 ページ16
*
阿部side
遠くで名前を呼ばれた気がして目を開ける。
俺はまた意識を飛ばしていたみたいだ。
無機質なベッドに、腕には点滴の針。
それを囲むお医者さんと看護師さんが３人ずつ。
俺の直感が、只事ではないと教える。
お医者さんの一人がベッドサイドにしゃがみ、もっと詳しい検査をしないと何とも言えませんがと前置きをして、今の俺の状態を話し始めた。
なんらかの原因で免疫反応が異常を起こし、生きるために必要な機能が攻撃されている。
そのせいで、食事からの栄養が一切吸収されていないのだそう。
伝えられた俺の今の体重は、最後に記憶していたものから、なんと13kgも落ちていた。
そんな体を守るために、脂肪と筋肉を破壊して栄養に変えることで生きながらえている状態だという。
代償として体の中で生命維持を脅かす物質が作り出されている…
このまま放置すれば昏睡状態に陥り命が危ない、と。
医「阿部さん、すぐに入院して治療を始めましょう。」
、、、は？
え、ちょっと何言ってんの？
人はあまりに想定外のことが起こると思わず笑ってしまうのだと、何故かそんなことを考えた。
「せんっせ、、おねがいっ、はぁっはぁっ、、します、、きょうっ、、、だけっ、、は、、っ」
医「阿部さん、今とても危険な状態なんです。このまま帰すわけにはいきません。」
終わりの見えないそんなやりとりを何度も繰り返す。
点滴を受けながら、問診だったりあちこちの検査をして、２時間くらい経った頃だろうか。
先生が再び俺の側にやってきた。
医「阿部さん、今日どうしても帰られたいのは、お仕事ですか？」
俺は、声も出さずに必死に首を縦に振る。
医「今日でないといけないですか？」
自分の目に涙が滲んでくるのが分かる。
「っ、、はいっ、、どう、して、、も、いかないと、、っけ、なくっ、てっ、、」
そのやり取りの後、先生は一枚の紙を俺の前に差し出した。
医「阿部さん、最後にもう一度言いますね。
今、本当に危険な状態です。普通だったら絶対に帰さない。
だけど、よっぽどの事情があると言うことなら、この同意書にサインをしてください。
病院を出たあと、阿部さんの体に何かあっても私達は責任を取ることはできません。
それだけ危険な状況だと言うこと、ご理解いただけますか？」
何を言われたって、迷いは無かった。
「、、わかりました、っ、」
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
