episode.19 ページ19
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阿部side
無理を言って劇場に向かったものの、時間の経過と共にどんどん体調が悪化していくのが分かる。
自分からもメンバーに連絡を入れなくてはと思いスマホを手に取っても、2.3行の短いメッセージすら打ち終える前に意識を失う。
ああ、もう嫌だ…
暫くして劇場に到着してもメンバーの反応を伺う余裕すらなく、されるがまま照に背負われて、次に気がついたのはふっかに名前を呼ばれた時だった。
簡易ベッドに寝かされている俺を囲むメンバー。
みんなの辛そうな顔を見てたら、聞かなくても何を言われるか分かるよ。
照「阿部、今日はお休みしよう。」
ほら、やっぱりそうだ。
頭ではわかっていても、少しだけ抵抗したかった。
だけど、次に掛けられた言葉にはもう何も言い返すことができなかった。
『今ひとりで起き上がれる?立ってられる?』
その問いにはもう、できない、と答えるしかなかった。
励まそうとする『来年もある』その言葉が、余計に俺を苦しめた。
病院で、マネージャーが側を離れてお医者さんと俺だけになった時に言われた言葉。
医「まだ確定ではありませんが、阿部さんは、
__________病である可能性が非常に高いです。」
聞いたこともない病名に、ショックとか絶望とか、そんなことより『何それ?』という感情が第一に浮かんだ。
それから、途切れ途切れの意識の中ネットでその病名を検索する。
今俺を苦しめる症状の全てがそれに当てはまる。
そして、その検索結果を見て感じた違和感は、俺を絶望の淵に突き落とした。
治療法とか完治とか、そんな言葉が見当たらない。
恐る恐る信頼できそうなページを開いてみると、
「発症率は10万人にひとり。
完治させる治療法は無い。
毎日の自己注射を一生続ける必要がある。」
いや、俺に限ってそんなことあるわけない。
逃げるように閉じたページに書かれたその言葉が、
『来年』を考えた瞬間にフラッシュバックする。
来年、俺はここにいるのかな。
SnowManのメンバーでいられるのかな。
今までだったら簡単に手が届くと思っていた1年後が、酷く遠いものに感じた。
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして!この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しぃ | 作成日時:2021年1月26日 12時