複雑 ページ41
『いーい湯だな!あははん!いーい湯だっな!』
「まて、壊れるな。ヒソカと何もなかったのは理解したから……」
ししおどしの上品な音が響く廊下に、二人の影が長くのびる。
こんな格式高い宿に宿泊できるなんてラッキーだ。ヒソカさんとのブラックヒストリーがなければもっと幸運だったけど
「そもそも、Aは無防備すぎるんだ。もはや私に対しては警戒のけの字もないじゃないか」
『あ、みてこの看板。この先は温泉だ。ここの温泉は川の真ん中に掘られてるんだってさ!』
「そうだ、混浴だからって何も考えずに異性と…」
「うわ、男女別だわ。うーん、男湯がここか。これは全裸望遠鏡で川上りをするしか」
「だからお前は!!」
ガシッと肩を掴まれて、思わずよろける。
しまった、クラピカさんおこだ。
「私のことを男性として意識したことあるのか?」
『も、もちろん!可愛い…じゃなかったかっこいいよ!』
「……そうか」
呆れたようにため息をつくクラピカが私の肩から手を離して看板の方へ視線を移す
「今日はここで解散だ。私は部屋風呂でいい。おやすみ」
『あれ、温泉豪華なんじゃ…あ、クラピカさーん?』
スタスタと歩いて行くクラピカの背中は、なんだか儚い。
クラピカを怒らせてしまうのはいつものことだけど、あんなに寂しげな表情をすることってあったかな。列車であった時から元気なかったしね。
『部屋風呂……』
この高級旅館に付いてる部屋風呂だ。もしや露天ではないだろうか。
「ポチ、ドラ。私達も部屋風呂の方に行こう」
「くあっ」「わん?」
クラピカと、少し話したい。
廊下を進んで、絵画が飾られた突き当たりを右に曲がる。
棚雲の間とプレートに彫られた扉を鍵で開けると、中からは檜の香りが優しく漂ってきた。
「わあ、すごい部屋…」
暖色の照明が、柄付きの行燈を通して部屋をぼんやりと照らしている。
棚雲の間。名前からしてジャポン風ではあったが、実際はジャポンとチャイナを足して割ったような内装だ。
鮮やかな緑の植物が繁茂する水槽の上には、真っ赤なランチュウが入った金魚鉢。
『部屋風呂はどこだろう』
ブラウン調の木材で艶やかにまとめられた部屋を見回して、アカシアの格子がかかったバルコニーに目を止める。
山々の景色が望めるバルコニーからは白い湯気が立ち上っていた。
____
『待てよ、これで部屋が遠かったら大惨事では?部屋を挟んで大声で談笑する迷惑客…』
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shela(プロフ) - はにゃ?さん» コメントありがとうございます!読みやすさ重視で頑張っていたのでとても嬉しいです〜応援ありがとうございます、これからも頑張ります!! (2023年2月10日 18時) (レス) id: 9d22579331 (このIDを非表示/違反報告)
はにゃ? - とても読みやすいです。これからも応援してます。 (2023年2月10日 8時) (レス) id: ef6fdebb20 (このIDを非表示/違反報告)
shela(プロフ) - アクアクさん» コメントありがとうございます〜!読者様の求めている作品に一致しているだなんて、本当に光栄です!!必ず続きを書きますので、これからも社畜少女にお付き合いいただければ嬉しいです!作品を読んでいただき、ありがとうございました! (2023年1月4日 17時) (レス) id: 9d22579331 (このIDを非表示/違反報告)
アクアク(プロフ) - これぞ私が求めていた作品そのもの!!続き待ってます!!!! (2023年1月4日 8時) (レス) @page45 id: 2730d44706 (このIDを非表示/違反報告)
shela(プロフ) - レーナさん» 読んでくださって、そしてコメントまでありがとうございます!お褒めのお言葉いただき嬉しいです!嬉しすぎますっ!!ネタやテンポ、力を入れているところなのでそう言ってもらえて本当にもう…!お気遣いありがとうございます、これからも頑張りますっ! (2022年4月2日 8時) (レス) id: 9d22579331 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:shela | 作成日時:2021年12月28日 19時