27:少し掠れた声 ページ27
ベッドの端に腰をかけた太宰くん。
「ホントにごめんA…。」
「うん、太宰くんが必ず戻ってくるの知ってたから。だって…太宰くんには私が必要だったから。」
「うん…すごく必要だった。君がいなくなって…当たり前のことが、こんなに大事なことなんだ…って気づいた。
でも…違う…今はAに私が必要だろう?」
私の手の上に手を重ねて絡める。
「やっぱり…表情変わらないね。」
「嫌?」
「ううん…好きだよ。」
太宰くんの一つ一つの言葉が胸の中で染み込んで、溶けていくのが分かる。それがとても擽ったい。
「ねぇ、太宰くん私ね…あと半年なの…。」
「うん…。」
「やりたいこと全部したい。」
「うん…。」
「早く亡くなりたいって…いなくなりたい…って…。でもね…太宰くんが会いに来てくれたから変わった…。」
「え?」
「延命治療しようかな…って。」
「どういうこと…?」
太宰くんの握る手が少し強くなる。
「薬で病気の進行を遅らせるの。もう治すのは不可能なの…手術しても無意味なんだって。だから大人しく死を待つしかないの。」
「そう…なんだ…ね…。」
「進行を遅らせて…少しでも多く太宰くんといたい。太宰くんがいるなら…痛いのも辛いのも…苦しいのも…我慢出来るし…頑張れるよ…。」
「表情…優しくなったね…。」
「え?」
「可愛いフランス人形…ロボットとか普通の人形よりよっぽど君にはお似合いだよ。」
長く太宰くんと一緒にいたいから…
「ねぇ、先生…今から延命治療したら…どうなる?」
「1ヶ月くらいしか伸びないよ…。」
「たったの…。」
「太宰くん…たったじゃないよ…。1ヶ月も伸びるんだよ?半年にあと1ヶ月もいられるんだよ?」
良いことじゃん?って言うと
「何事も前向きに…ってことね。」
「そーそー。」
先生が病室を出ると太宰くんが、これでもかと言うくらいベタベタしてくる。
「太宰くん…?」
「んー?」
「どうしたの?」
「半年もいられなかったからー。」
コレから半年と1ヶ月…何をしようか。
「半年に1ヶ月の間…何したい?」
「えー…太宰くんお出かけしたい。」
「うん、良いよ。しよっか。デートも半年と何ヶ月ぶりかなあー。」
「太宰くんが浮気するようになってから半年ー。」
「痛いこと言うね…。」
「んふふ、でも太宰くんはちゃんと帰ってきてくれた。」
声が少し出しずらかった。
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人生楽しんだもん勝ち - めちゃくちゃ泣きました、こんなに泣いたのは久しぶりでした。素敵な作品をありがとうございます。 (2021年8月3日 14時) (レス) id: 0301fd6d5d (このIDを非表示/違反報告)
シュメール人 - なんか、、やばい、、、、、 (2021年5月18日 1時) (レス) id: b636df43a5 (このIDを非表示/違反報告)
星 - コメント失礼します。凄く感動しました。素晴らしい作品を有難うございます。 (2020年5月4日 18時) (レス) id: 43b5f5b23e (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - 占ツクみて何年も経ちますがこんなに泣いたの初めてです…最高の作品でした!!本当にありがとうございました。 (2020年5月3日 23時) (レス) id: 0ebbee04e8 (このIDを非表示/違反報告)
華 - 泣きすぎてやばいです!呼んでいた1時間があっという間でした!本当にありがとうございました! (2020年1月4日 2時) (レス) id: 29d08050fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中二半の彼女は霜月さん | 作者ホームページ:
作成日時:2019年7月6日 2時