雪唄【風丸一郎太】 (ページ28)

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28：誰よりもずっと… ページ28

「あのね！！風丸くん！！」

俺が雅の名前を呼んだと同時に雅も俺の名前を呼んだ。

「あ、」

「雅からどうぞ…。」

「ありがとう…風丸くん…あのね、私…もう一度歌おうと思うの。シンガーソングライターとして…戻ろうと…思ったんだ…。
大きな声を出すのも怖くない…もう何も心配いらないから…。そしてね…風丸くんが聞いてくれるなら…私また…歌えるかもしれないって…思ったの…。」

その言葉を聞いて特別扱いされてるような感じで、嬉しくて少しだけ胸がくすぐったかった。

「あぁ…もちろん。いつでも聞かせてくれ…俺なら…俺の耳なら世界で1番よく聞こえて、よく聞いてる…たくさん聞いてやる…。どんな音でも声でも歌でも拾ってやるよ。絶対聞き逃さないから…。大好きな…雅の声が…。」

俺がそう言うと雅は立ち止まって俯いてしまった。え、嫌だった…？
そう言えば雅は鬼道の…

「あ！！悪いなっ！！お前には鬼道がいるのにな…。」

「ううん…違うの…。」

「じゃ…あ…なんだ？」

「有人くんとは別れたの…。」

「え？」

「私には別に好きな人がいるって言って…。」

そんなことを言われたら…俺…

「そうなんだ…。」

諦めるしかないじゃん…

「それでね…風丸くん…。」

それでも雅は続けた…

「好きなのは…私の声…歌…曲…歌声だけ…？私は…風丸くんが好きだよ…？」

あぁ…もう…俺から言おうと思っていたのに…。

「なんで先に言っちゃうかなあ…。」

コイツの歌を知らなくて良かった…。Eleと言うキミのもう1つの顔を知らなくて良かった…。

俺は雅を抱きしめた。

「俺だって大好きだよ…お前が俺を好きになる前からずっと…ずーっと…な。もうお前の声、歌…曲…歌声しか聞こえねぇよ…。」

今思えば鬼道の言ってた意味が分かった気がする。

「あ…。」

「雪だ…。」

ふわりふわりと雪が舞う。寒いはずなのに心はポカポカと温かく何だかとても幸せな気持ちになった。

「風丸くん…。」

「ん？」

「私を見つけてくれて…雅Aを見つけてくれてありがとう！！」

雪が降る中で温かな微笑みが降った。