8：苦しそう ページ8
「見晴らしが良いですね。」
「だろう？ココだと誰にも邪魔されない…2人きりだ。」
彼の言う2人きりの言葉に胸が締め付けられる。
そして花火が上がった。
色とりどりの錦冠…。
「綺麗…。」
「あぁ…。」
このままずーっと…時が止まればいいのに…。
「俺も…俺もそう思うよ…。」
「え？」
「俺もこのままずーっと…時が止まればいいのにって…思うよ。」
「翔…。」
その顔はとても悲しそうで…
「雨…止まないな…。」
彼の唇がそう動いた。
「え？」
「え？」
「あ…め？」
「あ、いや…何でもねぇーよ。ちょっと授業で習ったことが頭をよぎって思い出しただけだよ。」
「そうですか…。」
じゃあ…なんで苦しそうな顔をするんですか？
「そろそろ帰っか。」
「え？まだ花火が…。」
「良いから。帰りながらでも見えるだろう。」
「そうですけど…。」
手を引かれて帰路に着く。
「痛っ…。」
「A？」
鼻緒に擦れて血が滲んでいた。
「大丈夫か？」
「あ…大丈夫です…。」
「嘘つくなよ。ほら…おぶってやる。」
「でも…コレくらいなら…。」
「家まで時間かかるぞ。それまで我慢できるのか？」
「それは…。」
「出来ねぇーだろ？それどころか悪化させたいのか？」
黙るしかなかった…。
仕方なくおぶられて家に帰ることに。
「コレやるよ。」
「え？」
さっきのウサギだった。
「あと…コレは未来の約束。」
薬指にはオモチャよりも少しする指輪。
「先輩…。」
なんで…？
なんで悲しそうなんですか？
「顔…コッチに出せる？」
「はい…。」
触れる唇と唇。
「約束な。」
「先輩…あの…。」
「ほら、家だ。それと…傷…治せよ。」
そう言って私を下ろす。
「じゃあな…。」
この時の先輩の顔はよく見えなかった…
声は掠れて苦しそうで…
初めてのキスは涙と苦い味がした。
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作者名：中二半の彼女は霜月さん
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年12月13日 14時
