38：転勤 ページ38
9年前…
夏休みの終わりがけという時に父から言われた。
「悪いが…転勤で引越しすることになった。」
「は？今更？」
そのことで色々家族で意見が分かれた。
「俺は反対。今から転校しても意味無いから今の学校で卒業したい。」
それと紫月と一緒にいたいのもあったからだ。新体制となったチームも心配だった。
妹たち下の兄弟も嫌だと言って意見が揃わなかった。母と俺たちだけ残り、父の単身赴任と言う意見も出たが、なるべく家族一緒の方が良いや下の兄弟が小さいからというのもあって結局家族で引っ越すことになった。
夏祭りだけは行きたいと兄弟たちが言うため出発は夜となった。俺も紫月との約束があったためお祭りに行った。
浴衣姿の紫月はとても綺麗で…美しくて…触れれば消えてしまうかのように見えた。いつもの紫月じゃなかった。
それから紫月と屋台を回り、ゲームしたりして楽しんだ。最後に俺のお気に入りの2人きりになれる場所に向かって花火を見た。
その時彼女が…
「このままずーっと…時が止まればいいのに…。」
そうポツリと言った。
俺もそう思った。
そうなればお前と一緒にいれると思ったからだ。止まってしまえば離れなくて済むのに…って。
そう思った。
けど叶わなくて…
時間は止まることなく進む。
もう少しで行かなきゃ。
だから最後に…
「雨…止まないな」
そう言ったんだ。
雨なんか一滴も降ってないのにさ…。
俺バカみたいじゃん。
もちろん彼女は気づかない。
帰り際に鼻緒で擦り傷が出来たAをおぶって家まで送り届けた。
俺…今どんな顔…してるかな…。
分からなくて…
気づかれたくなくて…
左指にオモチャよりも少しする指輪を付けた。俺を忘れないようにって…。
Aに前のめりになってもらって唇に自分の唇を重ねた。
初めてのキスだった。
それから彼女の家の近くで下ろしてサヨナラをした。
そこからどう帰ったか覚えてない。
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作者名：中二半の彼女は霜月さん
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年12月13日 14時
