あの月を…【S】 (ページ9)

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52：雷ページ9

その日はとても天気が悪かった。そしてそんな日に限って二宮さんは定時上がり。

「二宮さんは先に帰ってて良いですよ。多分遅くなりそうです。」

「そんな日ほどいないといけない気がするんですけど？」

「二宮さんまで遅くなるのはいけません。」

何度か言い争いをしていると

「ニノは帰んな。俺もまだ仕事残ってから暫くは帰れそうにないから。俺が代わりに送っていくよ。」

「翔ちゃん…。」

「ね？」

「分かったよ…じゃあ翔ちゃんよろしくね。」

「よろしくされました。」

二宮さんは帰ってしまった。

「櫻井さん…すみません…。」

「いーえ。ニノの彼女なんだからコレくらいして当然です。」

にっと笑う櫻井さん。あぁ…櫻井先輩を思い出す。

そう思った時…

ドカンと大きな雷が落ちた。

「ひぃ！！」

それから停電が起きた。

「いやぁ！！」

暗いのが苦手なのではなくて広いところで見えなくなるのがトラウマだった。昔の出来事のせいで…。

そう言えば9年前の梅雨の時期にも似たようなことあったな…

怖いのに呑気なことを考えていた。

そう言えばあの時はどうしたっけ？

そう思っていたらまた大きな雷が落ちた

「いやあああっ！！」

もうパニック寸前だった。

その時だった…

「落ち着け！！」

誰かがそう言って私を包んだ。