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「そういやAちゃん、家、出たんやって?」


奢ったると言われて頼んでいたパンケーキの残りを食べていたら、向井さんが私にそう聞いた。

あれ、もしかして蓮が言ったのかな?

こくりと頷けば、そっかぁと声を漏らす。


「シェアハウス?してるってのもほんまなん?」

『蓮に聞いたんですか?』

「おん。聞いたっていうか、あいつが愚痴ってきたっていうか、まあそんな感じ」

『愚痴ってきた?』


蓮が?向井さんに?…なにを?


「寂しいんやろうなぁ、Aちゃんが自分の目の見えるところからおらんくなるのが」

『まさか笑』

「いや、それがそーでもないんよ。めめにとってはさぁ───」


と、そこで。口を開いたまま、わざとらしく言葉を切った彼。


『…とっては?』


そんな向井さんに違和感を覚えてそう聞き返してみたけど、彼は気まずそうに笑うだけだ。


「あーいや、いまのはちょっと口滑ったわ。ごめんAちゃん、聞かんかったことにしてくれん?」

『え、そう言われると余計に気になるんですけど』

「はは、そりゃそうやなぁ。でもまあ、おねがい、な?」


めめに怒られんの嫌やもんー、と向井さんはさっきまでとは打って変わって下唇を突き出し、ふにゃふにゃした声でそう言う。


怒られるようなことを言うつもりだったんだろうか。てか、あの文脈で言ったら怒られることって何?

と疑問は浮かんだけど、こっちを見つめる向井さんの瞳に負けて、その話はそこで終わり。





『ごちそうさまでした』
「んー、ええよ」


カフェを出て、打ち合わせにプラスして奢ってもらったパンケーキ代のお礼を言えば向井さんが目尻を優しく細める。


「それより、Aちゃん。今日話した件、よう考えてみてね。Aちゃんにとってはええ機会やと思うから」


実は今日、向井さんが持ってきてくれた案件はけっこう大きな依頼で。

それゆえに引き受けるかまだ迷いが生じているのだけど、ちゃんと考えてから返事をしようと思っている。


そして、こんな大きなお仕事をもらえるようになったのは全部向井さんのおかげだから、彼にはほんとうに感謝しかない。

もちろん向井さんに会わせてくれた蓮にも、だけど。


『はい、ほんとにいつもありがとうございます』

「んは、可愛いなぁ。頑張ってな」


くしゃりと笑った向井さんがぽんぽんと軽く私の肩を叩く。

その陽だまりのような温かさに、私の表情も自然と和らいだ。



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こゆき(プロフ) - きりさん» コメントありがとうございます!すごくお返事遅くなってしまってそして更新もサボりがちでごめんなさい、また読んでいただけたら嬉しいです…!これからもよろしくお願いします! (2月5日 15時) (レス) id: 75c0547d0d (このIDを非表示/違反報告)
きり(プロフ) - コメント失礼します!凄く面白くて一気に読んでしまいました!これからも更新頑張って下さい!応援しています! (12月31日 0時) (レス) id: 3f5478e762 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - さくまなさん» ありがとうございます…!そのように言っていただけるととても励みになります…!!更新頑張ります! (12月19日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
さくまな(プロフ) - めっちゃ面白いです!!早く続き読みたいです!! (12月14日 14時) (レス) id: cfe55a277b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こゆき | 作成日時:2020年12月1日 20時

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